ぼんやりって重要なんですよ

経営者が孤独だってよく言うでしょ。あれは嘘ですよ。意思決定をするときは、いくら独断専行でやっている人でも、会社のナンバー2、ナンバー3を呼んで言いくるめるくらいはやるでしょ。孤独なんかじゃないんですよ。日本の社会は、孤独といえるほど1人になれることって少ない。誰かが邪魔をしにきますから。

エステー会長 鈴木 喬氏

日本で経営者の仕事と称されているものの大半は、冠婚葬祭とかの雑用です。天下の大企業のトップが何をしているのかと思ったら、経済団体や業界団体に行っている。僕は絶対関わりません。辞めたら暇になるのにね。理解に苦しむんだよな。

日本の企業経営者は、ちょっと群れすぎですわ。孤独が怖いからでしょう。だから人に会ったり飯を食ったり。でも昔と違って、今は一緒に飯食ったから人間関係がどうだってことは、そんなにないですよね。私がたまに飯を食うキーパーソンは2~3人ですよ。だいたい、人間は生まれるときも死ぬときも1人でしょ。そう考えたら、孤独っていうのは人間の常態なんですよ。孤独を怖がる必要はない。1人でいいんですよ。

私、もともと群れるのが嫌いなんです。前職の生命保険会社にいた頃から、会社の二次会に行ったことがない。自宅に帰ってテレビを見て体操をしたりしていました。今でも週2、3回は水泳をしているし、時間があったらスキーしたり、自転車に乗ったり。あとは寝てるか、本を読んでいるか、音楽聴いているか。ぼんやりしているのが好きですね。

週末は家族と離れて、長野県にある山小屋に行って、一人遊びで山の中を歩いています。2018年までは冬山にも行っていました。アイゼンとスノーシューを着けて。私、この間84歳になったんですけど、何かあったら大変だからと衛星携帯電話をもたされました。山の中で通じるかどうかもわからないのに(笑)。

山小屋にいたり、山を歩いているときは、別に何か考え事をするわけじゃありません。歩きながら考えていたら崖から落ちちゃいますから、できるだけぼんやりするようにしています。そうやって精神的にも肉体的にも回復することで、何か困ったときにエネルギーが出る。別にそのためにやっているわけじゃないんですが、結果的にそうなっています。

孤独って言い方だとなんか悲しいけど、要はぼんやりです。ぼんやりって重要なんですよ。昔からよく、人間が大成するには監獄に入るか、大病するかって言われてますよね。あれはその通りで、余計なことや暇であることが人間をつくるんです。経営者っていうのは、基本的にリスク稼業。だから、いつも張りつめていたら持たないんです。大事な瞬間に最大風速を出せればいいんですよ。