団塊の世代が70代に突入しはじめた。将来不安は少なく、消費意欲も衰えを知らない。三菱総合研究所の佐野紳也主席研究部長と劉瀟瀟研究員は「男性には『ミーイズム、手軽さ、キープヤング』という特徴がある。企業はペルソナを更新すべきだ」と指摘する――。

子育ても介護も終えた70代は「ゴールデンエイジ」

団塊世代(1947年~49年生まれ)が70代に突入し始めている。しかし、多くの企業は、団塊世代が60代に突入した2007年頃と比べると注目していないようだ。70代になると、世帯消費支出も少なくなり、介護を受ける人も多くなり、生活もアクティブでなくなると思い込んでいるからだろう。またこの10年間シニアビジネスで空振りが多かったということもあるに違いない。

社会一般のこうした状況にもかかわらず、われわれは70代特に70代男性の消費に焦点をあてて分析を試みた。

なぜかというと、今後は60代の人口が減少し、70代の人口が増加していき、年代別で見ても最も人口数の多い年代層となるためだ。団塊の世代が70代に入ってくるためである。2015年には60代の人口が1831万人、70代は1414万人と60代が多かったのに対し、2020年にはそれぞれ1566万人対1634万人と逆転、25年には1488万人対1630万人と差が広がると予想されている。

70代男性については、これまでほとんど分析の対象にすらなっていないうえ、実際にはほぼ完全にリタイアしたことで、女性以上に経済的、時間的、幸福度という点で大きな変化を感じているとみられるからだ。

世の思い込みと異なり、当社の調査(※)では70代は「消費のゴールデンエイジ」となった。時間的にも経済的にもゆとりがあり、幸福度も60代に比べ高い(図表1)。

仕事からリタイアとなり、親の介護も終了し、本格的に時間的余裕が生じてくる。

経済的にも余裕が生じてくる。もちろん、「下流老人」と言葉があるように、実際、生活に困窮するシニア層がいるのは事実であるが、「経済的にゆとりがある」層が増加していることも事実であろう。収入は低くなるが、子供が巣立ち、教育費など子供に関する出費や仕事関連の出費も抑えられるからだろう。実際、家計調査でみると、家族人員数が減少するため、1世帯当たり1カ月消費支出は50~60代より減るものの、1人当たりの消費支出(二人以上世帯)は、70代前半まで、50~60代の水準とほとんど変わらず遜色がない。

幸福度が高まるのは、経済的、時間的ゆとりが高まるだけでなく、子供の教育や親の介護などに関する将来不安が少なくなっているためと考えられる。

(※)三菱総合研究所「生活者市場予測システム(mif)」では、2011年から20~69歳3万人を対象とした『生活者調査』を実施しているが、2012年よりシニア市場を分析するため、50~80代の男女1万5000名を対象とした価値観からなる『シニア調査』(年1回、7回実施)を実施するとともに、50~80代の男女約300名を対象とした常設MROC調査『シニアリサーチコミュニティ』を現在まで約7年運営し、約100万件の発言を蓄積してきた。そこから浮かび上がった、70代男性消費に関するインサイトを紹介する(MROC(エムロック)はMarketing Research Online Communitiesの略。ネット上に設置されたリサーチ専用コミュニティ)。