小室 なるほど。個人の仕事の仕方や効率を無視して「とにかく残業が多いから人を採りたい」という主張は通じないよ、と。これは説明しやすいですね。

曽山 ええ。もし背骨の傾きがフラット、つまり業務が平準化されたうえで、なおかつ受注が増えた場合には、たしかに人が足りない、という判断ができます。仕事を効率的に割り振りできるチームは「増員OK」にするんですね。

会社全体として帰宅時間を早くする努力はもちろんしなければいけませんが、チーム内で業務平準化をしているかもチェックすべきです。人員を増やす・増やさないの判断を、定量化した切り口から検討できるようにするのは、大事だと思います。

小室 その通りだと思います。今まで業務の効率を無視して、安易に人を採用してきた企業さんは、人を増やしても業績は上がらないし、コストは上がっていくばかりです。

だから「もう懲りた。どの部署も一律に人は増やさない」という方針をとりがちです。部下に権限委譲をせず、仕事の効率の悪い人が長時間勤務になるのを見逃してきたことのツケが、今いる人の力を活かせない風土を作ってしまっているのです。

※この対談は、プレジデント社の新刊『「3人で5人分」の仕事を無理なくまわす! 』(1月21日発売)に収録されているものです。