「パリ郊外に住むマンガ大好きの少女2人が、憧れのマンガの国、日本へ行きたいために家出をし、鉄道でロシアを横断しようとしたが、ポーランドで補導された」というニュースにはあ然としましたが、訪日するフランス人はこの5年間で6割増え、昨年は14万人近くに達しています。フランスからマンガ大国日本への熱い視線が注がれていることもその要因の1つでしょう。

日本を訪問する外国人は昨年837万人で、毎年増加傾向にあります。秋葉原と並んで観光客に一番人気の街は新宿。映画「ロスト・イン・トランスレーション」(ソフィア・コッポラ監督)の中で描かれた不夜城、24時間眠らない街、新宿がCool(かっこいい)だというわけです。そして歌舞伎町の入口にある「歌舞伎町一番街」という看板の前で写真を撮ることが大流行中です。首相となった現在も4冊のマンガを定期購読しているという麻生総理は、マンガ「オタク」として有名になったと自らが言うだけあって、秋葉原で絶大な人気があり、日本のアニメやマンガが世界中で認められていることを誇りを持ってアピールし続けています。

<strong>『Cool Japan-疾走する日本現代アート』</strong>(山口裕美著、BNN新社)
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『Cool Japan-疾走する日本現代アート』(山口裕美著、BNN新社)

日本のアニメやマンガ、ファッション、世界中に広がる寿司等の料理がCoolだという意味で、今ではあたりまえになったCool Japanという言葉は、2002年にアメリカの外交誌「フォーリン・ポリシー」誌に掲載された論文で、ダグラス・マッグレイという若いジャーナリストが取り上げました。彼は「Japan's Gross National Cool」と題された論文で、「失われた10年」といわれる90年代に経済的には落ち込んでいた日本が、経済の低迷とは裏腹に、アニメ、マンガ、ゲームソフト、ファッション、建築、映画、アートな どのポップカルチャーをいわば、熟成させ、大きな魅力あるコンテンツにしていると指摘したのでした。

そして、GNP(Gross National Product)にたとえて、GNC(Gross National Cool)、つまり「国民総クール指数」を引き合いに出し、「ソフトパワーを握る日本は大きな可能性がある」と日本を激励してくれました。彼の論文による勇気付けは、日本に大きな影響を与えたと思いますし、非常に興味深い切り口でした。

私も、2005年に出版した自著『Cool Japan 疾走する日本現代アート』(BNN新社)の中で、彼にインタビューをして、Cool Japanの背景にあるものについて語りあったことがあります。それは、今からおよそ1000年も前の平安時代にすでに枕草子の「うつくしきもの」として登場する小さいもの、かわいいもの、ファンシーなものが好きな国民性、大人文化と子供文化が未分化な風土、暴力や性風俗を含む多様な文化を受容する環境、オタク文化、庶民の目利きパワー、お笑い好きで笑いにうるさいことだったりしました。