為替予約を後回しで大目玉を食らう

「なんで、こんな言い方までされなければならないんだ!?」と思うほど、叱られたことが若い頃は何度もあります。

住友商事には昔から指導員制度がありました。新入社員に必ず先輩(入社数年~10年程度)が指導員として付いて、実務のイロハから社会人としての基本まで、1年間マンツーマンで教育する制度です。

<strong>住友商事 加藤 進 社長</strong>●1947年、京都府生まれ。神戸大学経済学部卒。ロサンゼルス駐在、米ミシガンスチール社長、人事総務グループ長などを経て、2000年本社取締役。05年米国住友商事社長。07年より現職。
住友商事 加藤 進 社長●1947年、京都府生まれ。神戸大学経済学部卒。ロサンゼルス駐在、米ミシガンスチール社長、人事総務グループ長などを経て、2000年本社取締役。05年米国住友商事社長。07年より現職。

私が1970年に大阪本社(当時)に入社したときも、指導員が付きました。鋼材貿易部だったので貿易の実務やビジネスの基礎を厳しく叩き込まれたものです。

上司から指示された仕事を後回しにしたときも大変でした。鋼材を輸出する際に為替の予約をするのも部の仕事。その予約をするよう指示されたのですが、私は作業中だった他の仕事を優先して、予約を少し後回しにしてしまったのです。

「為替というのは生き物なんだ。言われたときに、さっさとやれッ!」「しまった」……大目玉を食らい、深く反省した私は、二度と同じ過ちをしてはいかんと肝に銘じたものです。あとから振り返ってみると、新人時代に厳しく教え込まれたのは、とてもありがたいことでした。

最近の企業社会にはパワハラを気にしすぎて部下をあまり叱らない、注意もしないという風潮があるようですが、これは大きな間違いだと思います。叱るべきときは厳しく叱り、修正すべき点ははっきり指摘しないと人は育たない。私は、そう考えています。

もちろん、その前提には、指導する側の、君に育ってほしいという「愛情」と「熱意」、この人がここまで真剣に言ってくれるのだからと相手が納得するような「人格」が必要ですが。