アメリカで成功した靴通販のザッポスのビジネスモデルを日本に持ち込み、業績を伸ばすロコンド。しかし、社長の田中裕輔が参画したときには経営破たんの危機だったという。マッキンゼー出身社長は、どのようにその難局を乗り切ったのか――。
ジャーナリストの田原総一朗氏とロコンドCEO 田中裕輔氏

マッキンゼー出身者は、なぜ社外で活躍できるのか

【田原】田中さんは一橋大学のご出身ですね。

【田中】中高は桐朋で、歩いて3分のところに一橋大学がありました。それが理由としては大きかったですね。あとは父の影響があったかもしれません。父は銀行マンでしたが、「官僚や政治家になるなら東大がいい。しかし、ビジネスでは東大ブランドは意味がない」と大学に偏見があった。私はもともとビジネスパーソンを目指すつもりだったので、それなら一橋かなと。

【田原】一橋では何を?

【田中】経済学部に入って最初は経済の理論を勉強しました。しかし、正直面白くない。もっと手触り感があるものを学びたくて、3年生以降は商学部の授業を受けるようになりました。

【田原】卒業後はマッキンゼーに入る。どうしてマッキンゼーに?

【田中】商学部の勉強にシフトをしたときに、かつてマッキンゼーで役員をしていた若松茂美先生の授業を受けました。先生はマッキンゼー出身の方を何人か授業に連れてきたのですが、先生も含めて、みなさん話が面白くて興味を持ちました。笑いを取るという感じではないんです。でも、起承転結があって、論理的でわかりやすく、借りてきた言葉ではなく自分の言葉で話していました。私は人の話をじっとして30分も聞いていられないタイプでしたが、このときはむしろ引き込まれるように聞いた。こういう方たちと働けたらいいなと思って入社しました。

【田原】大前研一や上山信一、南場智子、政治家では茂木敏充。どうしてマッキンゼー出身者は活躍する人が多いんだろうね。

【田中】私は会社人としてはマッキンゼーしか知らないのでほかと比較はできませんが、主体性があって、積極的にリスクを取りにいく姿勢が違う印象があります。クライアントのためになることだったら遠慮なく言う。それがクライアントや上司に評価されたらラッキーだけど、そうでなくても言うべきことは言うぞという感じで。

【田原】日本の大企業と逆だね。典型は東芝。7年間も決算を粉飾していて、上のほうの社員が気づかなかったわけがない。でも異を唱えたら左遷されるから、何も言わない。マッキンゼーなら言いますか?

【田中】言うと思います。性格的にも黙っていられないし、みんな優秀でスキルが高く、ほかの会社に行っても困らないことも大きい。私も入社したときに、いつでも辞められる実力を身に付けることを意識しました。入社4年目にUCバークレーにMBA留学したのも、上司の評価を気にせずにリスクを取れる人になろうと思ったからでした。