中学入試の「国語」で得点の差が出やすいのが、主人公の心情を読み取らせる記述問題だ。中学受験塾講師の矢野耕平氏は「高得点を取るのは、いわゆる心情語の語彙量が豊富で、口語を“標準語”に変換できる子」という。「キモい」「ヤバい」「ウザい」が口癖の今どきの子を、親はどう教育すればいいのか――。

中学入試国語の物語文読解で頻出! 点差がつく「心情記述」

先日終了したばかりの2019年度の中学入試・国語で出題された問題をいくつか紹介しよう。

●麻布中学校
:(文中に)「中をさぐり、招待券を~バッグに入れ直した」とありますが、ヒナコがこのようなことをしたのはなぜですか。説明しなさい。

●聖光学院中学校(第1回)
:(文中に)「泣きそうな気持ちのまま、少し笑った」とありますが、それはどうしてですか。60字以内で説明しなさい。

●渋谷教育学園渋谷中学校(第1回)
:(文中に)「いい名前をつけてやろうと思った」とありますが、「私」がこのようにこの子猫の名前にこだわったのはなぜですか。41字以上50字以内で説明しなさい。

●頌栄女子学院中学校(第1回)
:(文中に)「一緒に、を言う声が震えた」とありますが、なぜ「声が震えた」のでしょうか。その理由をわかりやすく説明しなさい。

●洗足学園(第1回)
:(文中に)「袖や裾の紅葉を見やると、ふふっと、つい忍び笑いが漏れる」とありますが、これはなぜですか。解答らんに2行以内で答えなさい。

2020年の大学入試改革を見据え、心情を答えさせる問題が増加

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Pornpak Khunatorn)

この5問に共通していることがある。1つは、すべて物語文の読解問題であること。もう1つは登場人物の「気持ち」を答えさせる心情記述問題であるという点だ。

設問の文には「気持ちを説明しなさい」、あるいは「心情を答えなさい」とは書かれていない。でも、これらは間違いなく心情(気持ち)を答えるよう要求している。

なぜか。

設問の「」(カッコ)部分はすべて登場人物の「言動」や「表情」に関する表現だ。わたしが中学受験指導をする際に、小学生の生徒たちに次のような説明をする。

「いいかい。登場人物の『言動』や『表情』の裏側には『ある気持ち』が潜んでいる。だから、『言動』『表情』の理由を記述させる問題が出題されたら、ああこれは『~気持ちから』で答えなければならないと考えてほしい」

2020年に大学入試改革が行われる。回答文例から選択するタイプではなく「書いて表現する」ことに重きを置いた入試に移行する。だからだろうか。昨今の中学入試では受験生に「相当な分量の記述問題」を課す学校が増えてきた。そして、物語文の読解において、最も出題される記述問題のタイプはこの「心情」を問うものである。