そこで、プロジェクトチームは「やわふく」に限り、従来のコスト積み上げ方式をやめて1カップ84円(2個パックで168円。丹波黒黒豆のみ228円)の販売価格の死守を決定。製造にかかるコストを減らすため、機械と相性がよく不良品の出にくい容器を選んだ。容器の試作品は10個近くにも及んだ。

かくて、プロジェクトチームはわずか半年という短期間で「やわふく」の開発を完了し、発足から1年後の06年9月に販売を開始する。発売と同時にブレークしたのは前述の通りだが、「やわふく」は価格だけで売れたわけではない。

<strong>「とことん語れる商品につくり込んだ」</strong><br>
左からマーケティング企画部部長の竹村晋七郎さん、同部コア事業グループ・係長の徳永憲彦さん、リーダーの石田吉隆さん。本社は、神戸市のポートアイランドにある。2階のキッチンスタジオでは、定期的に料理教室が開かれ、地域住民との交流を図っている。

「とことん語れる商品につくり込んだ」左からマーケティング企画部部長の竹村晋七郎さん、同部コア事業グループ・係長の徳永憲彦さん、リーダーの石田吉隆さん。本社は、神戸市のポートアイランドにある。2階のキッチンスタジオでは、定期的に料理教室が開かれ、地域住民との交流を図っている。

マーケティング企画部部長・竹村晋七郎はその理由をこう語った。
「つまり、とことん語れる商品につくり込んだのです」

竹村の解説によれば、「やわふく」には価格以外にも、実にきめ濃やかな工夫が施されているのだ。列挙してみよう。

1回で食べきれる量目を封入
真空パックでなく、煮汁に豆を泳がせることで“ふっくら感”を維持
皿に移さずそのまま食卓に出せるリッチなカップ形状を採用
フィルムを開けやすくし煮汁に寒天を添加することで開封時の飛散を防止
「おまめさん」との差別化のため、だしの質を向上させ、砂糖の量を調整

こうした工夫は、消費者とのキャッチボールを繰り返す中で生まれていった。モニター調査やテスト販売を実施し、消費者の声を集める。味に改良を加える。次は、その場で食べてもらうのではなく、家庭の食卓で試してもらう。その結果をふまえ、使用シーンにあわせた容器を開発する。