やらなければいけない仕事なのに、なかなか着手できない。そんな悩みを抱えている人は多いはずだ。

「それは気持ちの問題も大きいと思いますね」と横田雅俊さんは分析する。

「私は営業マン時代から『遅いのは仕事ができないことと同じ』と自分にいい聞かせてきました。そこで最初は、仕事の始めの時間を設定するようにしたのですが、前の仕事が押してしまったり、『もうちょっと遅く始めても間に合うかな』と考えることがあったりで、あまりうまくいきませんでした。そこで、今度は終わりの時間を設定し、終わり時間が近づいたら、とにかく一回まとめて終わらせるというルールをつくりました。すると、『少し早めに着手しよう』と考えるようになったり、集中力が上がったりと、よい影響が出てきたんですね」

着手ではなく完了を先にイメージすることで、結果として着手が早くなったというのである。

箱田忠昭さんの対処法は、「嫌な仕事はとりあえず4分間だけやってみる」ということだ。

「私にとって原稿を書くという仕事はたいへん面倒くさい、嫌な仕事です。家に帰ってきて寝る前に原稿を書かなければならないけれども、本音では先延ばしにしたい。しかし何もしないで寝るのも心苦しいから、まず原稿用紙1枚だけ書いてみようと机に向かう。すると4分間かけて半分くらい書いたところで、調子が出てきて、結局は10枚くらい書けてしまうのです。実は、嫌な仕事というのは最初のとっかかりが難しいから嫌なのであって、意識的に4分間だけ我慢してやってしまうことが秘訣なんですね」

一方、枝廣淳子さんは着手が遅い原因を6つに分類してみせる。

まず1つは、単純に「時間がないから」。2番目は、はじめて経験する仕事であったり、不慣れであったりするため、「どこから着手していいかわからない」という場合だ。

「たとえば私の場合の不慣れなやらなくてはならない仕事は、『出版社へ単行本の企画書を出す』ということでした。そういうとき、私は企画書の書き方の本を読んだりすることで仕事の中身を調べ、調べたことをベースにして、やるべきことを列記し、小分けしたうえで着手するようにしました」

そして3番目は、これといった理由があるわけでなく、「なんとなく」。一例をあげると「こんなことをしたら、お世話になったあの人はどう思うだろう」「気まずい思いをするのではないか」という対人関係に由来するブレーキだ。

いずれにしても原因をはっきりさせることで、対処法が浮かび上がってくる。

対人関係がブレーキになっている場合は、「仕事に着手する前にあらかじめ話をしておく」「わからないようにひっそりと着手する」といった対策が打てるのである。

もっとも、ほんとうに「なんとなく」着手できないこともある。そんなときは「とりあえずその場で着手してみる」ことを枝廣さんはすすめる。箱田さんの「4分間対処法」に通じるコツである。

(談=川本 裕子、箱田忠昭、枝廣淳子、丸山 学、横田 雅俊、堀 義人)