まずは1枚で書き切る力をつける

一方、1~2枚なら苦にならないが、10枚になると行き詰まるというタイプは、枚数が増えたときにどのように対応すればいいのだろう。齋藤氏は、「まず1枚の質を高めることが大切」とアドバイスする。

「枚数が増えると文章が迷走してしまうのは、1枚の段階で構成ができていないからです。1枚でしっかりと文章を組み立てられれば、あとはそれぞれの要素を膨らませたり、並列的に要素を増やすだけでいい。なかでもビジネス文書は、1枚で書き切る力が重要です。1枚目で結論と根拠をきちんと説明できれば、2枚目以降は詳細資料をつけ足していくことで、5枚でも10枚でも書けるようになります」

ただ、枚数に応じて要素を追加したり深掘りするといっても、一般の書き手には難しい。そこで重要になるのが、事例やエピソード、データなどの外部素材の引用だ。

「外部素材の引用は、枚数を増やしたいときに便利です。しかし、量を稼ぐためにつまらない事例を羅列すると、読み手にすぐ飽きられてしまいます。かといって、おもしろい事例やエピソードを引っ張ってくればいい、というほど単純なものでもない。大切なのは、全体の文脈に沿った事例やエピソードであるかどうかです。その意味でも、まず1枚でしっかりと構成をつくり、文脈を自分で把握することが重要なのです」(齋藤氏)

藤原氏は10枚から要素を削ぎ落として1枚に、齋藤氏は1枚から要素を増やして10枚にするという対照的なアプローチを教えてくれた。どちらにしても基本の構成は同じで、要素の増減が枚数に対応するカギになる。はたしてみなさんは、どちらのアプローチがやりやすいだろうか。