相続は、人生最後に誰もが直面する問題です。専門家のお世話になる方も多いと思います。

しかし、ここで専門家の選択を誤ると、遺産の取り分をめぐって相続人の間に感情的な行き違いが発生したり、節税ができずに相続税負担が大きくなったりと、その後の人生に大きな影響を及ぼすこともあるのが現実です。

それでは、誰に頼めば円満に解決できるのでしょうか。私は1993年ごろから、相続コーディネートの仕事を手掛けています。これまでに1万人以上の方からお話をうかがい、実務をお手伝いしてきました。そこでわかってきたのは、「不動産」が一番の問題だということです。

資産の中に評価額の大きい不動産が含まれていると、亡くなった方がふつうのサラリーマンで、ほかにめぼしい資産がなかったとしても相続税が発生する場合があります。すると相続人は、納税のためにたいへんな苦労をすることになります。

また、不動産は一つひとつ違うものですから、評価が難しいという問題もあります。預貯金や株式などの金融資産と違い分割しにくいこともあって、相続人の間でトラブルが生じがちです。
逆に考えると、不動産の問題さえきちんと解決できれば、節税などの手段により健全な形での資産継承が可能になるのです。

ですから「不動産に強い」「節税意識がある」「相続人の立場になれる」という3条件を満たした専門家を選び、タッグを組んで相続を乗り切らなければなりません。ご紹介する3冊は、そのためのヒントになるでしょう。

1冊目の『相続は誰に任せるかで大きく変わる!』(週刊住宅新聞社)は、相続ナビゲーターとしても活躍する寺西雅行税理士と私・曽根との共著です。

両者がそれぞれの立場から、実際の相続にどのように取り組んでいるかを紹介しています。相続人が用意すべき文書の文例や、確認事項のチェックリストなどの図版類も豊富です。2人とも、既存の常識にとらわれず顧客目線で取り組むべきだ、という意見では一致しています。

2冊目は森田義男著『取り返せ!相続税』(すばる舎)。森田さんは税理士兼不動産鑑定士。土地の相続税評価について詳しく、かつわかりやすく解説しています。

森田さんは「相続税は、担当する税理士の腕前次第」と明言します。ここでいう「腕前」とは「土地評価をいかに行うか」であり、「具体的には『不動産に強いこと』と『税務署に強いこと』の2つ」です。

土地を的確に評価するには、評価規定を立体的に理解するといった不動産についての力量が必須であると森田さんは力説します。明快で説得力のある主張です。

3冊目は拙著『幸せを呼ぶ節税の教科書』(PHP研究所)。サブタイトルは「『オーダーメード相続』で財産を守ろう!」です。相続税の節税をキーワードに、生前の相続対策の順序と、相続後にできる節税について、具体例をあげながら紹介しています。

生前対策では、経済面と感情面の両方の配慮が必要です。そのことを中心に、ポイントを整理しながら解説しました。

また、相続手続きが終わった後でも節税は可能です。たとえば被相続人が亡くなったあとでも、土地の評価を下げ納税額を減らすことはできるのです。本書では、そういった具体的な節税方法についても踏み込んでいます。

※すべて雑誌掲載当時