現役時代の職業によって、定年後の経済力、生き方はどう変わるのだろうか。職業別に「リアルな老後」を紹介しよう。2人目は「スーパーボランティア」の尾畠春夫さんの場合――。(全5回)

※本稿は、「プレジデント」(2018年11月12日号)の掲載記事を再編集したものです。

【スーパーボランティア】

自営の魚屋を畳んだ尾畠春夫さん。「月5万5000円の年金収入」を頼りに被災地へ

宿泊は車の中、食事は「雑草」をむしって食べる

2018年8月、山口県周防大島町で2歳男児が行方不明となっていた事件。警察や周囲が男児の生存を諦めかけていた中“スーパーボランティア”尾畠春夫さんがその男児を山から見つけ出した。

左:この笑顔に被災者は癒やされる。右上:尾畠さんの車内。右下:差し入れでもらった広島風お好み焼きを頬張る。

ヒーローとなった尾畠さんにはマスコミが殺到。国民も尾畠さんに引き寄せられた。災害があれば、どこにでも駆けつける。中越地震、東日本大震災、熊本地震……。被災者にボランティアを続けながら、当の本人は月5万5000円の年金だけで生活している。

そんな仏のような尾畠さんだが、実際にそれだけのお金で、どうやってボランティアを続けながら暮らしていけるのだろうか。18年8月、尾畠さんが土砂の撤去作業をしていた西日本豪雨の被災地、広島県呉市に行き、休憩中の尾畠さんにどうやって生きているのかを聞いた。

そもそも、尾畠さんはなぜ、ボランティアを始めたのだろうか。そのきっかけは四国のお遍路だったそうだ。

「私はよく旅をしました。日本を横断したり、九州を一周したり。そんな中で四国のお遍路道も歩きました。そこで受けた“お接待”が忘れられなかったのです」

お接待とは四国の住人がお遍路さんを支援する昔ながらの四国の風習。寝床や食べ物を無償で提供するなど、善意によるおもてなしだ。