最終期限がある場合には、ネゴシエーターはその期限を相手に知らせたほうがよい結果を得ることができる。なぜか。第1に、どちらの側も期限がくる前に合意する方向で努力する可能性が高まるので、手ぶらで交渉の場を後にする危険性が減る。第2に、あなたの期限がわかっていたら、相手はそうでないときよりはるかに早く譲歩する。

こちらの期限を相手に明かすべきかという問いには、2つの注意書きがつく。第1に、期限を時間コストと混同してはならない。最終期限は双方にとって交渉の終わりを意味するが、時間コストは一方の側だけに作用する。たとえば、あなたが誰かと裁判でなんらかの法的解決を求めて交渉しているとしたら、あなたが依頼している高料金の法律事務所の時間コストはあなたの側だけに影響を及ぼす。解決に至らないまま時間が経てば経つほど、支払う弁護士費用は高くなる。相手があなたの時間コストに気づいて実際に引き延ばしを始めたら、こちらはどうすべきなのか。裁判の日程を繰り上げるなど、双方に最終期限を課すよう努力することだ。

時間コストとBATNAの影響

第2に、期限を明かすときには、自分のBATNA──best alternative to a negotiated agreement(交渉による解決に代わる最善の策)──も明かすべきかどうか慎重に検討しよう。

たとえば、あなたが1週間後にヨーロッパに引っ越すことになっていて、急いで車を売りたいと思っているとしよう。自分の弱いBATNA(友人にあげるか、倉庫に預けるか)を隠したまま、買い手候補者に、これは「1日かぎり」のオファーであるとだけ伝えればよいのである。期限は必ずしも弱い交渉ポジションを意味するものではない。それどころか、きわめて多忙で、きわめて多くの期限を抱えている人は、たいてい最強のBATNAを持っているのである。

(翻訳=ディプロマット)