“ピン・ピン・コロリ”という言葉は、ご存じだろう。高齢になってもピンピンして元気で、寝たきりになることもなくコロリと亡くなってしまうことをいう。

それが理想とされるのは、現実はそれとは程遠いからで、日本人の平均寝たきり期間は約2年。一方、アメリカは約1年と日本の半分。日本での寝たきりの原因で最も多いのは「脳卒中」、それに次ぐのが「大骨腿頚部(だいたいこつけいぶ)・転子部(てんしぶ)骨折」。QOL(生活の質)を奪うとして、大きな社会問題となっているが、なかなか認識する人が少なく、今でも毎年約10万人の人々が受傷しているのである。

その大腿骨頚部・転子部骨折――いったいどこなのかよくわからない人がほとんどだろう。

脚の太ももの骨を大腿骨という。大腿骨の最上部は球形をしていて骨頭と呼ばれ、骨盤とのつなぎ目の股関節に入っている。骨頭のすぐ下の細くなった部分は「頚部」と呼ばれ、さらに、それにつらなる太い部分が「転子部」である。

原因の多くは転倒で、転倒後に脚の付け根が痛くて歩けなくなった場合は、ここを骨折したと思って間違いない。転倒場所は、意外に思うかもしれないが、家の中がほとんどだという。

また、転倒しないのに骨折を起こしているケースもある。それは、骨がスカスカ状態になる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)が強い場合で、日常生活の中で徐々に骨折を起こしてしまうのである。

大腿骨頚部・転子部骨折の場合、病院へ運び込まれた当日か翌日、遅くても2~3日のうちに手術をするのがよい。手術が遅くなると、歩けないことで重篤な肺炎、床擦れ、認知症などを発症するリスクが高いからである。何と100歳の人でも手術を行っている。ただし、全身の状態がかなり悪い場合は、主治医と十分に話し合う必要がある。

手術は頚部骨折と転子部骨折では多少異なる。大腿骨頚部骨折の手術の70%を占めているのが人工の骨の「人工骨頭」に替えてしまう手術。そのほかに、骨折部分にチタン製のピンを入れて骨を支える「スクリュー固定」「フック・ピン固定」「スライディング・ヒップ・スクリュー固定」がある。

大腿骨転子部骨折では骨をつなぐ手術が一般的で、最も多く行われているのが「ショート・フェモラルネイル固定」と「スライディング・ヒップ・スクリュー固定」である。

手術後は、しっかり固定されていれば歩くことができるし、歩かねばならない。リハビリは手術の翌日から始まり、QOLを下げないのが重要なポイントとなっている。

 

食生活のワンポイント

転倒を予防するには、家の廊下やトイレ、風呂、階段などに手すりをつけるのが重要であると同時に、室内をバリアフリーにするのも大事である。

それとともに、運動をしっかり行って、筋力を維持すると転倒予防になる。

そして、万が一転倒しても骨折しにくい骨をつくっておくのも忘れてはいけない。いわゆる骨粗鬆症予防である。

(1)カルシウムを積極的に摂取しよう!
日本人はこの摂取量が少ない。体内のカルシウムの99%は骨や歯の成分となっている。カルシウムを多く含む食材は、牛乳、パルメザンチーズ、ゴマ、ウルメイワシ、煮干し、ひじきなど。

(2)ビタミンDも重要!
 体内のカルシウムの吸収をよくするのがビタミンD。日光にあたることでビタミンDがつくられるが、黒くなるほど日焼けすれば逆にビタミンDの合成能力が低下してしまう。1日40分ウオーキングする程度で十分。食材でビタミンDの多いのは鮭、カツオ、マグロ、イワシ、天日干し椎茸など。

そして、適度な運動も骨を丈夫にする大きなポイントである。