大崎裕史

1959年、福島県会津生まれ。株式会社ラーメンデータバンク代表取締役。広告代理店・飛竜企画の社員時代の95年、ラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。翌年には全国を対象としたラーメンデータベースサイト「Ramen Bank」を開設した。イベントやラーメン集合施設など、ラーメンに関するさまざまな分野でコーディネーター役を担う。2005年、株式会社ラーメンデータバンクを設立、代表取締役に就任した。ブログ〈自称「日本一ラーメンを食べた男」の日記〉が人気を博している。


 

ラーメンばかり食べているイメージを払拭したかった!……というのは冗談ですが、こういった店で食事をしていると、ラーメンファンから怒られることもあります。そんな余裕があるのなら、1杯でも多くラーメンを食べろ、ということですね。

でも大丈夫。昼にラーメンを3杯食べてきました(笑)。

ラーメンにしても他ジャンルの店にしても、私はコレクター型なんですね。美味しい店を見つけても、もっと美味しいところがあるんじゃないかと考えてトライするのが好きなんです。ラーメンの世界もずいぶんと多様性が出てきているので、レストランでの食事も勉強になります。

ラーメンは全部自腹で食べます。行列店ならば1時間でも2時間でも並ぶ。紹介する以上、一般のお客さんと同じ目線でなければいけません。混雑の中での接客はどうかなとか、座ってから待たされるのではサラリーマンには勧められないとか。音を立てて麺を啜るので、スーツなどもすぐにダメになってしまう。気にしながら食べても美味しくない。服を一冬でダメにしたこともあります。

昔は、ラーメン店主は職人気質で接客まで気が回らない、というところもあり、そういう店には気の利く奥さんがいた。頑固オヤジと気遣い奥さんが私の理想店です。今は夫婦でやる店も減ってきて、店主の接客もよくて当たり前になりました。

ただし顔は大事です。いい店の店主の顔には気合が漲っています。500人の客が来るとして、ラーメン一杯は店からすれば500分の1です。しかし客にとっては大事な一杯。いい店の店主はその一杯に気を抜かない。そういう気合が、必ず顔に表れるんですね。

ラーメン店の暖簾は一人でくぐることが多いから、気持ちよく食べられて店主の気合までが丼に入ってる、というのがいい。レストランの場合は何人かで楽しむ雰囲気で、そのうえでサプライズがあればなおいい。そういう店を紹介したくなります。「ヒロソフィー」のメニューはとにかく見せ方で楽しませてくれます。サプライズ満載なので写真は載せたくないほどです(笑)。「レヴェランス」は雰囲気がとてもいいお店。ソムリエが料理に合わせたワインを選んでくれる。接客も楽しいんです。若いのにオヤジギャグも飛ばすし、客の会話にさりげなく入ってくる間が絶妙。両店ともメニューには気合が漲っていて、ほかの部分にさらに客をもてなす気持ちが入っています。

ラーメンは日本に誕生して100年。蕎麦が400年、パスタが700年ということを考えるとまだまだ。成熟しているイタリアンやフレンチでここまで工夫がある。それを目の当たりにして、ラーメンの輝かしい未来に思いを馳せています。