女性に大人気の雑貨店「中川政七商店」。東京・丸の内KITTE、六本木の東京ミッドタウン、表参道、いま話題のGINZA SIXなど、全国に約50の直営店を展開している。商品はロングセラーの「花ふきん」をはじめ、食器、包丁、鞄、靴下、衣類など昔ながらの暮らしの道具が中心。自社ブランド以外の多くは、中川政七商店がコンサルティングを行っているメーカーとの共同開発商品である。

1716年に奈良晒(ならざらし)の卸問屋として奈良で創業した会社がどのように業態転換し、人気ブランドを生む企業に生まれ変わったのか。

早稲田大学ビジネススクールの入山章栄准教授が解説する。

▼KEYWORD 第二創業

これまで本連載で私が紹介してきた企業同様に「中川政七商店」も若手経営者の代替わりによって革新が起こり、飛躍した「第二創業」企業と言えます。

現代表は13代目中川政七こと中川淳氏。京都大学法学部を卒業し、富士通にSE職として入社。しかし、2年弱で退職し、2002年に中川政七商店に入社します。それから15年で、売上高約5倍の52億円にまで同社を成長させました。まさに第二創業です。

小さい挑戦を、早く始めてみる

経営学者の私から見ると、中川氏の第二創業は大きく3つのステップを踏んでいます。

1つ目のステップが、「リアル・オプション的な業務改善」です。中川氏が中川政七商店に入社した当時、メーン事業は茶道具卸で、業績は順調でした。しかし、お母さんが始めた雑貨部門は、赤字続き。そこで、社長である父に直談判して雑貨部門を担当するようになります。

「ありとあらゆることがグチャグチャでした。まず、生産管理という概念がなかった。人気のある商品は常に欠品状態で、いつ、何個入荷があるのかを聞いても誰も答えられない。その異常さに誰も疑問を持っていない。ただ、『ちゃんとした会社にしなければ』と思った」と中川氏は言います。