実際に経験する

経験は学びにつながる。当たり前のことのようですが、実は学びにつなげるのにもコツがあるのです。経験して、「大変だったね」「面白かったね」という感想レベルで終わってしまっては、学びにはなりません。

経験しただけではなく、振り返りが重要なのです。うまくいったことと、うまくいかなかったことの事実の整理。その要因は何か。もっとよいやり方は無かったのか。経験したことで、自分の内面に変化が生まれたか。そんなことを振り返るのです。他人からフィードバックをもらうことも重要です。自分では気づかなかったことを指摘してくれることもあります。

さらに振り返りを学びに変えるには、事実を受け入れられるだけの自身の開かれた心が必要です。心が閉じていると、事実を受け入れられない。そうすると、そこで学びはストップしてしまいます。

この連載第4回に、私が大失敗から学んだエピソードを紹介しました。あのとき、自分以外のせいにしたままだったら、私は何も学べませんでした。気持ちの落ち着きを取り戻し、「なぜ?」と自省することが学びのスタートでした。

いくつかの経験が積みあがったら、体系化・一般化することです。ある状況での個人的な経験から、他の状況や他人にも適用できる状態になります。

他人に教える

わかっていると思っていることを他人に教えようとしたとき、うまく伝えられなかったことはありませんか?説明は、しどろもどろ。質問されてうまく答えられず右往左往。こんな経験です。実は、他人に上手に教えるには、心の底から、「自分の言葉でわかっていること」が必要なのです。

相手が門外漢であれば、なおさらです。専門用語を並べても絶対に相手は理解できません。そうすると、教え方を工夫しなければなりません。専門的な用語を避け、簡易な言葉で、しかも相手の理解できる表現を用いることが必要です。決してどこからか持ってきた理屈の受け売りではうまくいきません。

また、どんな質問をされるか事前に想像しておくと、いかに自分があいまいにしか理解していなかったのかがわかります。他人に教えることをきっかけに、本を読んだり、自分の経験に照らして整理しなおしたり、そうすると深く理解することができるのです。