人と話す・観察する

あるプロジェクトをやっているとします。クライアント企業の中には、いろいろな立場の人がいます。経営層、企画部門、管理部門、営業、生産など、部署も違えば職位も違う。クライアントと契約している別の企業の人が参画することもあるでしょう。クライアントの顧客という立場の人もいるかもしれません。当然、自分のチームメートや上司・部下もいます。

プロジェクトを離れても、友人・知人がたくさんいるでしょう。過去のクライアントや営業で見知った人もいます。

立場が違えば考え方は変わるし、人が変われば言い方も変わる。そういう人たちと多く対話することで、いろいろな情報も得られるし、人を観察することで気づきも得られます。

ポイントは2つあります。一つはうまく質問して、相手の考えや情報を引き出すことです。もう一つは、得られた情報や考え方を、そのまま鵜呑みにするのではなく、自分が既に持っている知識や情報・知恵などと照らし合わせるのです。

私が新人コンサルタントのときに、「1を聞いて10を知る人がコンサルタントに向いている」と言われました。その10を知る秘訣が、自分が既に持っている知識や情報・知恵などと照らして、想像を拡げることなのです。

他人を観察することや、何か物事を観察することは、重要な学習法です。仕事の上でも、プライベートでも観察によって多くのことが学べます。

例えば、何かの報告書を作ったとしましょう。数十ページになったとします。これをクライアントの部長に説明するとき、説明に一生懸命になって、相手の反応をおろそかにしてはいけません。報告書を見ている部長に変化が無かったか?妙に長く読み込んでいるページがあるかもしれません。あるページは無視するかのように、すぐに次に進んでしまったかもしれません。視線の変化はなかったでしょうか?細かく観察すると、言葉には表れない部長の要求や興味、あるいは逆に触れたくないことがわかります。

他の例として、大きなプロジェクトに参画したときを挙げましょう。あなたは自分の仕事に一生懸命で、隣のチームが何をしているのか、無関心ではありませんか? これは大きな学習のチャンスをみすみす捨てているのです。リアルに進んでいるプロジェクトで、隣のチームがものすごく苦労しているとしましょう。あなたは隣のチームの担当領域や期限は知っているでしょう。そうであれば、どういうことで苦労しているのか少し聞くだけで、仮の体験ができるのです。そして、その仮の体験から気づきを得ることができるのです。

日常生活でも、観察によって多くのことを学べます。電車の中吊り広告を出している業界はどこが多いのか?なじみのレストランで混み具合が変化していないか?客待ちのタクシー数は変わっていないか?物事に興味をもって、さまざまな角度から観察することで、日々の生活からも大きな学びは得られるのです。