前回は、「勉強しさえすれば必ず成功すると考えるのは間違い」という話をした。実社会で直面する問題には「これが正解!」といえるものは、ほとんどの場合存在しないからだ。しかしコンサルタントは「答え」を出す仕事でもある。そのために、いかに学べばいいのか。

本は「受け売り」するために読むのではない

羽物俊樹氏
羽物俊樹氏

「お勉強の罠」に注意しろと言いながら、いきなり肩透かしを食らわしたみたいですね。すみません。実際、本や雑誌を読むことは大切なことです。ただ、本や雑誌に「正解」が書いてあるわけではありません。あくまで、一つの考え方が書かれているのです。それを、自分にインプットしておきたいがために、読むのです。例えば、未知の業界のコンサルを行うことになった場合には、その業界に関する本を必ず読みます。内容を受け売りするためではなく、自分の洞察力を高めるための事前インプットなのです。

ですから、書かれている内容を吟味しながら読みます。事実を記載している部分と、著者の主張によりバイアスがかかっている部分とは区別しなければなりません。また事実として書かれていることも注意が必要なのです。アンケート結果のようなものは要注意です。どんな人をアンケート対象にしているのか、どういう聞き方をしているのかなどで大きく結果が変わってくるからです。

コンサルタントの仕事術のような本も読むことがあります。ただ、仕事術といったものは万能ではないので、鵜呑みにすることはありません。どんな人のどんな状況だったら、この仕事術は有効か。今取り組んでいるプロジェクトに適用すると効果は出るだろうか?そんなことを想像しながら読みます。

このように自分が既に持っているものと照らしながら深く読むと、1冊の本を読んだだけで、他人より多くのことが得られるのです。

自身の経験から得たことを整理しなおすために、本を読むこともあります。整理といっても、何も無いところから始めるのは大変です。そこで先人たちの成果を活かすのです。ビジネス書の中には、さまざまな事象を分析して、論理的にきちんと構成されているものがあります。例えば、経営戦略本には、戦略のフレームワークが数多く紹介されています。こうしたフレームワークに自身の経験を照らすと、整理にもなる上に、自身が経験していない部分についての理解も深まります。

「今回の仕事は企業内の分析が中心だったが、外部との競争環境を考慮に入れると見方が変わったかもしれないな」

こう振り返るだけで、学習効果が全く変わり、次の仕事に大きく活きるでしょう。