本を読まない10~20代の女性に売れているジャンルがある。一部から「メンヘラ恋愛本」と呼ばれているもので、恋愛にまつわる“病み”がつづられている。著者はツイッターでの人気アカウント。発売から3カ月で6万部を超える本も出ていて、ジャンルをつくりつつある。若い女子は、なぜ過激な短文に引きつけられているのか――。
KADOKAWAが刊行している「メンヘラ恋愛本」

「死ぬまで追いかけ回すけど」

今の若者はどんな本を読んでいるのか。今年2月に発表された「第53回学生生活実態調査の概要報告」(全国大学生協連実施)によると、1日の読書時間を「0分」だと答えた大学生の割合は53.1%だった。1日のうちにまったく読書をしない人の割合が半数を超えている。

しかし、この「本を読まない」世代をターゲットにした恋愛本が、いま密かなヒットを重ねている。そこに載っているのはこんなポエムだ。

絶対に彼女になれないってわかったら、今度は「好きじゃないなら、なんで抱いたの?」ってまた悩む。喜んでセフレになったクセに、ボロボロになって帰ってくる。いったい、なんの武者修行をしてるんだよ。
――ニャン著『好きな人を忘れる方法があるなら教えてくれよ』(KADOKAWA)
こっちが病的に愛するからそっちは適当にフラフラして。適当にエサまいてくれればいいし好きに遊んで。死ぬまで追いかけ回すけど。
――みやめこ著『好きとか遊びとか本気とか浮気とか駆け引きとか、もうどうでもいいから愛してくれ』(KADOKAWA)

それぞれ別の書籍からの引用だが、いずれも恋愛に振り回されて思い悩む者の心情を代弁する内容だ。いずれの著者もツイッターで大量のフォロワーをもつ。「ニャン」(@radran10)のフォロワー数は約66万2700、「みやめこ」(@miyameko_chan)のフォロワー数は約32万3200だ(いずれも11月末時点)。ツイートの内容は、ユーモアや自虐を交えた自分の恋愛話や、恋愛に関する「名言」が中心。書籍は書き下ろしだが、ツイッターでの投稿と同様に独り言のような短い散文で構成されている。

人気の「メンヘラ恋愛ツイッタラー」

こうしたアカウントはネット上で「メンヘラ恋愛ツイッタラー」と呼ばれている。「メンヘラ」とは、もともとは「メンタルヘルスに問題がある人」を意味するネットスラングだった。今では、精神疾患を抱えているかどうかにかかわらず、「考え方や性格が難儀な自分に苦労している人」といった程度のニュアンスでも使われている。

紹介した2冊のうち前者は発売3カ月強で6万部、後者は発売1年半で3万部を超えている。好調を受け、この2冊のような「メンヘラ恋愛本」が、ひとつのジャンルになりつつある。中心読者は10代後半~20代前半の女性。現在進行系で恋愛に悩んでいる世代に「リアルな言葉」として刺さり、ヒットにつながっているとみられている。