病気、介護、お金、片付け、空き家、お墓……。「実家」のさまざまな問題を解決するにはどうすればいいのか。「プレジデント」(2017年9月4日号)の特集から処方箋を紹介する。第1回は「長生き・医療リスク」について――。

年収約370万円以上なら大幅負担増

2017年8月、70歳以上の高齢者の医療費の負担が見直された。

写真=iStock.com/maroke

これまでのように、「負担するのは現役世代、給付を受けるのは高齢者」という構造では、健康保険制度を持ちこたえさせるのが難しくなってきている。そこで、負担・給付の両面で全世代型の社会保障にしていくために、年金などの収入が一定額を超える70歳以上の高齢者の負担が引き上げられることになったのだ。

そのひとつが健康保険の高額療養費の自己負担限度額だ。

高額療養費は、医療費が家計の重荷にならないように、1カ月に患者が支払う自己負担分に上限を設けた制度だ。この制度のおかげで、医療費が高額になっても際限なく自己負担しなくてもよいのはありがたいが、今回の見直しで負担が増える人が出てきたのだ。

70歳以上の人の高額療養費の限度額は、「通院のみ(個人単位)」「通院と入院の両方した場合(世帯単位)」があり、これまでは所得に応じて「低所得者I」「低所得者II」「一般所得者」「現役並み所得者」の4区分に分類されていた。このうち、負担増となったのは一般所得者と現役並み所得者だ。

具体的な収入で見ると、一般所得者は住民税が課税されている世帯で年収約370万円までの人。現役並み所得者は年収約370万円以上の人だ。今後、どのように負担が増えるのか、通院時の医療費が月100万円かかったケースで比較してみよう。

「高額療養費の限度額」は最高で約25万円に

一般所得者の通院時の高額療養費の限度額は、これまでの月1万2000円から、17年8月に1万4000円に、2018年8月からは月1万8000円に引き上げられる。

一方、年収370万円以上の現役並み所得者は、かなり負担が増えそうだ。まず、これまで月4万4400円だった通院時の限度額は17年8月からは月5万7600円にアップ。さらに、18年8月からは通院のみの計算はできなくなり、通院と入院の両方した場合に一本化される。

同時に所得区分が3つに細分化され、年収約370万~約770万円の人は8万7430円、年収約770万~約1160万円の人は約17万円、年収約1160万円以上の人は約25万円に引き上げられる。高所得層はこれまで4万4400円だった高額療養費の限度額が、一気に約9万~約25万円に増えることになる。高齢の親の医療費の負担を不安に思う人もいるだろう。