「ウチは地域のお客さまに愛されることが最大の目標です。広島は日本酒ファンが多く、酒とワインの品揃えには絶対の自信があります。そこに鶴岡さんは金麦を売り込んでくる。本当のファンを増やしたいんですね。彼の実現力はすばらしい。口だけの営業マンが多い中で、約束した販売量は、自分で売りますから」

バイヤー梅田秀樹の鶴岡評である。「you me」が山口県に出した新店で、金麦レギュラー缶を1日で100ケース売ったこともある。有言実行の姿勢がバイヤーや担当者の信頼を磐石なものにしていく。

スーパーでビール類を買っていくのは主婦である。家で飲むのは男性だが、購入は女性。この真理を金麦のCMは突いている。「主婦が金麦を買って、家で夫の帰りを待っている」というコンセプトが明快だ。相場社長が言ったように、ブランドを絞り込んで徹底的にマーケティングする姿勢。それが奏功している。

さらに「伸びている市場」という言葉は、ジャンルの選定に止まらない。展開の場所も含んでいる。中国市場だ。縮んでいる国内市場とは対照的に中国市場は拡大の一途をたどってる。84年、中国市場に外資として初めて進出し、上海でのビールのシェアは4割強。サントリーは中国でのファンづくりに見事に成功したのである。本格的なビール事業の展開はこれからだというから楽しみだ。(文中敬称略)

(小倉和徳、滑 恵介(広島)=撮影)