雑誌「プレジデント」(2018年10月15日号)では特集「ビジネス本総選挙」にて、仕事に役立つ100冊を選出した。このうち5つのジャンルごとに「トップ10冊」を紹介しよう。第1回は「マーケティング・営業部門」について――。

古典的ビジネス本が上位に多い理由

ランキングを見ると、古典的ビジネス本が上位に並んでいます、つまり時代に左右されない普遍的理論を人は求めているのではないでしょうか。

例えば1位のジム・コリンズらの『ビジョナリー カンパニー』はまさに古典的名著。これが多くの人に選ばれたのは、会社の業績などの表面的な情報ではなく、企業が追求する価値を重要視するべきという考え方が支持されたからだと考えます。

1位 なぜジョブズ亡きアップルも強いのか
『ビジョナリー カンパニー』
ジム・コリンズ、ジェリー・ポラス 日経BP社
2位 大塚家具の経営幹部に読んでほしい
『マネジメント』
ピーター・F・ドラッカー ダイヤモンド社
3位 中国生まれのビジネスマンが見た日本のヤバイ営業
『新版 やっぱり変だよ日本の営業』
宋 文洲 ダイヤモンド社

日々の仕事に追われると、受注数を増やして利益を上げれば十分な経営と思えてきます。ですが、会社というのはビジョンや理念が非常に重要であり、それが存続のために必要不可欠ということを教えてくれます。副題で「時代を超える生存の原則」とありますが、本書で取り上げられている企業事例は時代を問わず通用します。スティーブ・ジョブズが亡くなってもアップルが今なお評価されている理由がここには書かれています。

本書には「時を告げるのではなく、時計をつくる」という言葉が出てきます。これは本書の趣旨を一言で表しています。

経営者が会社や組織をリードするときには「時間を正確に伝える」のではなく、トップがこの世を去っても時計のように永遠に時を刻み続ける「仕組み」が重要であるということです。今も昔も企業に必要な観点は同じ。企業はその気になれば誰でもつくれますが、世の中に本当にためになるビジョナリーな会社をつくれる企業はその中でもごく一部なのです。

この本は、特にこれから起業を志している人にはお勧めです。起業となると利益やビジネスモデルに目が向きがち。ですが、会社として最初に考えるべきことは自分が会社を去ってからも世の中に提供できる価値。今を席巻するIT企業経営者でこの本を読了した方は多いはずです。