ただし、今ではかつてのように一流大学であればよほどの問題がなければ採用されるという時代ではない。企業の求める人材像のハードルは年々高くなっていて、実際、東大、早大、慶大など、高学歴者であっても振り落とされる。

上場企業の「大学別出身」社長数/上場企業の「大学別出身」役員数
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上場企業の「大学別出身」社長数/上場企業の「大学別出身」役員数

ましてや入社後の出世が保証されるわけではない。企業内の仕事も複雑化、専門化がどんどん進んでいて、期待される成果を生み出し続けなければ、出世も望めない。

「無学歴は出世できないの」という子どもの問いには、いい学校、いい大学を卒業していることが出世に有利に働くことがあると答えるのがベターだろう。

会社員は、自分の目指すべき仕事や専門性を身につけるための不断の学習と修業が今や不可欠になっている。企業の採用担当者が重視している資質の一つとしてよく挙げるのが「自己研鑽能力」。つまり、自分を高めていくために常に努力する力があるかないか、に注目している。

最近、大手流通業は事務系職種にもかかわらず理工系学生を積極的に採用している。その理由を尋ねると「大学4年間を遊んで暮らした文系学生に比べ、理工系学生は研究や実験に明け暮れるなど常に勉強する習慣が身についているからだ」(採用担当者)という答えが返ってきた。

もちろん会社に入れば相応の教育はやってくれる。しかし、会社が教えたこと以上の知識やスキルを獲得するには本人の努力は絶対に欠かせない。とはいっても自己研鑽能力は一朝一夕に身につくわけではない。小さい頃からの学習習慣により養われていくものだ。

中学、高校、大学という目標を目指して勉強することは決して無駄ではない。勉強することで学習習慣が養われ、自分なりに努力してきたことを確認する証明の一つが学歴であり、さらに努力して目標とする職業に就いて充実した人生をおくるための出発点でもあるのだ。

(早川智哉=撮影)