県知事就任から1年と7カ月が過ぎた。支持率89.5%。全国的な 「東国原ブーム」 で県産品が爆発的な売れ行きを見せる。しかし、「県政改革」 の実像がいまだに見えない。「タレント民主主義」 の危険性に迫る。

県産品を売ることが本来の知事の職務か?

福田内閣改造の8月1日、宮崎県の東国原英夫(そのまんま東)知事は報道陣に「首相官邸から電話があると思って待っていたけど、こなかった」と述べた。誰もがいつものタレント知事の受け狙いのジョークと聞き流したが、「案外、本気かも」と思った人もいた。

東国原知事には大臣への「華麗なる転身」を夢想しても不思議のない状況があった。遅れて今年2月に登場した大阪の橋下徹知事と並んで、全国区で高い人気を誇っているからだ。

高人気は「有名タレント」だけが理由ではない。2007年1月の知事選で独自のマニフェストを用意して戦い、圧勝した点も、人気持続の要因である。マニフェストの提唱で知られる北川正恭(早大教授。前三重県知事)が言う。

「選挙でたけし軍団が応援にくるかと思ったら、パッと出したのがマニフェストだった。『これをやる』と徹底的に説いて回ったら、共感を呼んだ。中身は徹底調査による体系立ったものとはいえないけど、情実やお願いの選挙から契約の選挙へ変えたのが大きい。みんなが選挙のあり方に辟易としていたとき、打破する武器としてマニフェストを使い、宮崎県をこうしたいとメッセージを伝えた」

改造で大臣にと夢想したとすれば、政府の「行政支出総点検会議」(7月25日設置発表)の10人のメンバーに知事でただ1人、選ばれたのも影響していたのかもしれない。知事選のマニフェストで「一般会計の歳出見直しによって単年度で350億円の財源の捻出」を謳い、実現に取り組んできたが、政府はその点と知名度を買って指名した。東国原は次は入閣と期待していたのだろうか。

だが、人気の裏側の問題点を指摘する声もある。浅野史郎(慶大教授。前宮城県知事)が苦言を呈している。

「選挙の戦い方を見て、自分の主張を心から訴えていると評価していたが、大阪の橋下知事を見ていると、東国原知事は間違っているわけではないけど、宮崎県の知名度を上げるとか県産品を売ることは、どう見ても本筋ではない。現職知事逮捕について『県庁の常識は県民の非常識』と言い、『どげんかせんといかん』と訴えた。就任直後、県庁職員に『裏金、ありませんか』と言った。これが本筋です。そこが外れた」