5年前、38歳のときに実家にいても仕方がないと思い、親の反対を押し切り、家出同然で東京に来た。

「そこからがこの人生です」

蒲田や大森など、格安ネットカフェが集まるエリアを転々としている。余裕のあるときは新宿のサウナに泊まるが、所持金が減ると、この1時間100円のネットカフェで眠る。お金が底をつき、野宿したこともあった。

携帯電話は、維持費を払いきれずに解約した。携帯電話がないと派遣会社への登録もできない。ユウジさんは仕事を探すため、毎朝、新宿や川崎の駅前に出向く。ジャンパーやジャージ姿など「それらしい格好」をしていると“手配師”と呼ばれる男たちが日雇いの仕事を持ちかけてくるという。

主に建設現場での日雇い仕事は週に2、3回あればいいほう。日当はよくて1万円で、年収は100万円いくかいかないか。仕事が見つからなかった日は、時間をつぶすために山手線を何周も乗るのだという。暖がとれて、座れて、マンガも拾えるからだ。

コンビニの店員にいやがられないように服装には気をつけていると話すが、前歯が虫歯でほとんどないため、その姿はどこか異様で、痛ましい。

定職に就きたくても、定まった住所がないとどこも相手にしてくれない。さらに住所はごまかせるとしても、毎日のやり繰りで精一杯だから、月払いの給料日までをしのぐ余裕がないという。

「貯金の目標は10万円。そうすればなんとかなる。だけど、その10万円が大変なんです」

老いた両親を頼ることはできない。姉が3人いるが、今の境遇を知られたくないので絶対に連絡は取りたくないという。国民健康保険にも未加入で、病気になっても病院には行けない。

ユウジさんは、金欠と病気のなかで不安にのたうちまわる。

「先のことは恐ろしくなるので、考えないようにしている。とりあえず今、そして明日のこと。2、3日の余裕ができたら1週間先のことを考える。でも1週間先は、死んでいるかもしれないと思うこともある」