G8だけでは問題解決が難しい理由とは

おもな国際会議の構成図
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おもな国際会議の構成図

しかし、2000年代に入ると、経常収支不均衡問題は、グローバル・インバランスと呼ばれ、アメリカの経常収支赤字に対して、中国、日本を代表とするアジアの経常収支黒字、そして、原油輸出国の経常収支黒字が問題視されるようになった。先進国2国間だけの経常収支不均衡問題にとどまらず、先進諸国と新興諸国をも巻き込んだ経常収支不均衡問題に発展してきたのだ。

さらに、07年にサブプライム・ローン問題として表れたアメリカ発の金融危機は、欧州に飛び火し、世界金融危機に発展するとともに、欧米の金融機関がそれまで積極的に資金運用していた新興国から資金を引き揚げることによって、新興国にまで悪影響を及ぼしている。このような影響を受けて、アイスランドや東欧諸国の通貨、さらには、韓国ウォンが暴落することとなった。

このような状況のなかで、G8首脳会議だけでは問題解決の道を探ることは難しい。むしろ新興国を含めたフォーラムにおいて問題解決の道を探らざるをえなくなっている。G8首脳会議のほかに、中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカで構成される新興5カ国首脳会議がラクイラ・サミットにおいて行われた。

G8首脳会議と新興5カ国首脳会議にエジプトを加えた拡大首脳会議が開催される一方、オーストラリア、デンマーク、インドネシア、韓国を加えた主要経済国フォーラムも同時に開催されている。ラクイラ・サミットにおいて、先進諸国と新興諸国から構成される拡大首脳会議では、通貨切り下げ競争を回避することには同意が得られたものの、基軸通貨ドルをサポートする一部の先進諸国と基軸通貨ドルに代わる代替通貨(例えば、SDR)を提案する中国などの新興諸国の意見の対立が明らかとなった。

グローバリゼーションのなか、新興諸国が高い経済成長を遂げるにつれて、これまでの先進諸国だけの首脳会議ではなく、サミットの拡大化の必要性が増している。その一方、拡大サミットでは問題解決のコンセンサスに到達しにくくなっていることも事実である。それは、幼少の子供たちとの家族旅行と比較して、成長した子供たちと旅行するときに、その行き先と日程の調整に難航するのと同様である。

(図版作成=平良 徹)