(4)「選択肢のポートフォリオ」という視点

組織は通常、複数のプロジェクトを同時進行させているので、リーダーたちが特定のプロジェクトにすべての関心を奪われないようにすることが大切だ。市場の変化によって、さほど重要ではなさそうだったプロジェクトがあっという間に最重要プロジェクトになることもある。

バランスのとれた見方を持ち続ける方法のひとつは、組織のプロジェクトを「選択肢のポートフォリオ」とみなして定期的に見直すことだと、シミズとヒットは述べている。そうすれば、市場の状態を見て、あるプロジェクトからより有望な別のプロジェクトに資源を回しやすくなる。

(5)結果を分析し、学習する

柔軟性は学習する能力から生まれる。だが、企業は自身が実行する戦略的プロジェクトから学べることをすべて学んでいるだろうか。しかし、よい結果だけでなく悪い結果についても原因を仔細に調べてこそ、マネジャーは自分の学習経験を最大にできる。

たとえば、企業買収がうまくいかなかったが、経営陣がその経験から多くのことを学んだ場合、その会社は買収した企業を売却して、新たに学んだ知識を将来の買収を成功させるために使うことができる。こうした学習の具体的な価値を判定するのは不可能かもしれないが、企業はそれを各プロジェクトの投資収益の一部とみなすべきだ。それは往々にして企業のものの見方を大きく変えてくれる。

その好例として、シミズとヒットはシスコシステムズを挙げている。同社は買収を重ねることで大きく成長してきた。著者たちによると、シスコはそれぞれの買収からできるかぎり多く学ぶために一致協力して努力するとともに、買収先の企業やその企業の業界、市場についてよく知っている重要な人材が離職しないよう、配慮している。これらの社員は、組織が自分たちの事業や市場を新しい視点からとらえる手助けをする、すばらしい教師になれる。そのような新しい視点を採り入れる能力は言うまでもなく、戦略的柔軟性を高めるための欠かせない要素だ。

(翻訳=ディプロマット)