今年リバイバルしそうなのがウェスタン風(カウボーイ・西部劇)。世界中で叫ばれる地球環境問題や自然回帰への流れが背景にあるのでしょう。一方で、流行には現代アートも深く関与しています。

2005年のヴェネチアビエンナーレで展示されたリチャード・プリンスの作品。
写真を拡大
2005年のヴェネチアビエンナーレで展示されたリチャード・プリンスの作品。

2006年、ワールドツアーで来日公演をしたマドンナ。登場シーンで空中高く舞い上がっていた球から彼女が出てきたときにステージの後ろに投影されていた映像は、まさにカウボーイのイメージで、馬と疾走する風景が登場していました。実はこのイメージ、私には見覚えがありました。数年前のヴェネチアビエンナーレで見たアーティストのリチャード・プリンスの作品だったからです。ミュージシャンのような名前ですが、米国の現代アーティストで、最近は自分が持っている牧場の写真作品などを発表しているスターアーティストの1人です。

  最先端のミュージシャンとアーティストは友人関係にあることも多く、お互いに刺激を受けあっています。

今年、ルイ・ヴィトンはこのリチャード・プリンスとコラボレーションして、定番のバッグに泥で汚れてしまったような模様を使い、カウボーイやウェスタンの乾いた空気感のイメージを押し出しています。このように、流行の源をたどると、現代アートに行き着くことがよくあります。

現代アートとコラボレーションが活発なのは老舗メゾンブランドです。ルイ・ヴィトンは、1997年、ニューヨークの人気デザイナー、マーク・ジェイコブスがアーティスティック・ディレクターに就任、斬新な試みが出てくるようになりました。2002年にはアーティストで演出家のロバート・ウィルソン氏とのコラボレーションによって、モノグラムのバッグにイニシャルのLとVの蛍光カラーのラインが入ったシリーズをプロデュース。翌年には、村上隆氏を起用、長年手を入れることがタブーとされたモノグラムに白と黒を基調としたモノグラム・マルチカラーラインを発表、世界中で大人気となり、現在は定番化しています。そして第3弾の今回は、リチャード・プリンスという意外なアーティストとのコラボレーションを実現させました。

メゾンエルメスのエントランスでダイナミックな作品を発表したミヤケマイの作品。エルメスが馬具商であったことから龍の背に鞍がつけられている。
写真を拡大
メゾンエルメスのエントランスでダイナミックな作品を発表したミヤケマイの作品。エルメスが馬具商であったことから龍の背に鞍がつけられている。

  エルメスはスカーフに、すでに鬼籍に入っている20世紀抽象絵画の巨匠、ジョセフ・アルバースを起用、6種類の「カレ・アルバース」を限定200枚作るという画期的な試みを始めました。シャネルはイラク出身の建築家、ザハ・ハディドに依頼し、移動式のパビリオンを制作、このパビリオンの中に20組のアーティスト達がシャネルの定番である「キルティングバック」からインスピレーションを受けた作品を発表、それらをパビリオンごと、世界巡回させています。このコラボレーションでは、日本人アーティストのオノ・ヨーコや荒木経惟、束芋らが参加しましたが、どの作品にも必ずシャネルのバッグが登場するので一部では「アートではなく宣伝ではないのか」との批判も出ました。

  プラダは、デザイナーのミウッチャ・プラダが現代アートコレクターで、建築家・レム・クールハースによるプラダ美術館をミラノ南部に建築中です。銀座にあるエルメス、シャネル、プラダのショップにもそれぞれにアートスペースがあり、ウィンドウディスプレイや展覧会、レクチャーやコンサートなどのアート支援活動や特別な顧客のためのイベントを開催しています。老舗メゾンブランドはオーナー自身が現代アートのコレクターであることが多く、プラダ財団などは大規模国際展には必ず協賛しており、サポートしているアーティストとの関係も良好です。