コンビニ業界は、たばこの購入が自販機からシフトした「タスポ効果」により堅調だ。しかしそれ以前、他チェーンが既存店売上高を落としていたときも大手で唯一、対前年比を伸ばしていたのがファミリーマートだ。今期もたばこを除く“真水部分”でも伸びている。「今のファミマは勢いがある」と市場でもいわれる。ただ、不思議なのは特別な要因が見あたらないことだ。なぜ好調なのか。

<strong>ファミリーマート社長 上田準二</strong>●1946年生まれ。秋田県出身。山形大学文理学部卒業後、伊藤忠商事に入社し、同社食料部門長補佐兼CVS事業部長などを歴任。2000年ファミリーマート顧問を経て、02年3月より現職。「若い人にファミマかわいいと言われるのが、人気の証拠でしょう。今までにない発想でファミマワンダーを続けていく」
ファミリーマート社長 上田準二●1946年生まれ。秋田県出身。山形大学文理学部卒業後、伊藤忠商事に入社し、同社食料部門長補佐兼CVS事業部長などを歴任。2000年ファミリーマート顧問を経て、02年3月より現職。「若い人にファミマかわいいと言われるのが、人気の証拠でしょう。今までにない発想でファミマワンダーを続けていく」

「アナリストからも、計算式が間違っているんじゃないかといわれます。というのも以前から、ファミリーマートには“ホスピタリティあふれる店づくり”とか“お客様の家族になれる店”とか、観念的で定性的な話ばかりだが、それで日販が何%伸びるのか、定量面に結びつく説明をしろといわれていたからです。確かに、われわれのやり方はすぐには数字に直結しません。

イノベーションとは目先の変わった事業やちょっと飛んだ発想の戦略を行うものと勘違いしがちですが、そうではなく、コンビニのあるべき姿を追求し続ける継続力こそが、イノベーションの原動力になる。ファミリーマートの場合、前から続けてきた定性的な運動が今、定量的な数字となって表れてきたのです」

世の中には、ある働きかけが一定段階まで積み上がると突然、ブレークするティッピングポイント(臨界点)がある。商品が口コミで急にヒットするのは典型だ。ファミリーマートの躍進にもその動きが見える。実際、躍進に至る過程では、2002年の社長就任以来の上田氏の地道な努力の積み重ねがあった。

「私が社長に就任したとき、ファミリーマートには大きな欠陥がありました。ある日、経営スタッフが、社員の仕事の仕方としてPDCAサイクルを回していきたいというのでこう叱りました。この会社はPlan(計画)とCheck(評価)だけで、Do(実行)とAct(改善)はどこへいったんだと。

本部は毎週データを集め、計画のこれが実行されていない、あれができていないとチェックばかりしていました。大切なのは現場でのDoとActの戦闘力です。この戦闘力が欠けていた。