経済が停滞しているからといって「基本に戻って」ばかりもいられない。イノベーションをスピーディーに商品化するためにはどうしたらいいか。その鍵は、社内における情報交換、意見交換の方法を見直すことにある。

研究部門と他部門の交流が製品化を加速

製品を研究室から市場に出すまでになぜこんなに時間がかかるのか。経営幹部は何年もそうこぼしてきた。しかし、サンフランシスコのコンサルティング会社、ストーン・ヤマシタ・パートナーズの、キース・ヤマシタは、IBMにおいてこの問題を1日で解決してしまった。さまざまな部署から1200人の社員を一堂に集め、新製品のアイデアを考えて「売り込む」エクササイズを行ったのだ。こんな具合である。

まず、一部選ばれた社員が、それぞれ仕事を遂行するためのチームをリクルートする。それから、各チームが、どの市場をターゲットにするかを決定し、参加企業の代表にどんな製品なら買う気になるかをインタビューした。最後に、各チームがそのプロジェクトの資金をどうやって調達するか、つまりプロジェクトの売り込み方を考える。

なぜそれが成功したのか。「異部門間の交流によって、組織についての社員の考え方を再構成することが(エクササイズの)狙いだった」と、ヤマシタは言う。「社員たちは『IBMリサーチと顧客との接触をもっと早くからもっと頻繁に行ってはどうか』というようなことを提案し始めた。『アイデアを思いついたとき、それを評価する今とは別のルートがほしい。あるいは、この人物に電話すればいいというような仕組みがほしい』という提案も出た」。

現在の厳しい経済情勢下では、企業は膝を抱えて状況が好転するまで「基本に返る」ことを語りがちだ。しかし、正反対のことをする企業もある。パワー全開で創造性を高め、スランプから抜け出す新しい方法を考えるのである。そのためには、創造性を高める新しい方法を開発する必要があるが、これまでにないやり方でコミュニケーションをとることも必要だ。

たとえば、ケロッグ社のある部門では、100人以上の社員がビジネスや市場について語り合い、新しいCMなどを観て、ブレーンストーミングができるコーヒー・セッションを、定期的に開いている。これによって伝えたいのは、イノベーションは研究室だけが行うものではないということだ、とケロッグのモーニング・フーズ部門のトップ、ジェフ・モンティは言う。

以下に、イノベーションを活発にし、創造的な思考を促すための3つの方法を挙げてみよう。