フォロワーに求められる3つの能力とは

実は、経営学でもリーダーシップに対する関心に比較して、フォロワーシップに関する研究は案外少ない。米国でもあまり多くの研究がないのだから、日本ではさらにほとんど関心が集まってこなかった。ほぼ唯一の例外は、リーダーシップ研究の第一人者、金井壽宏氏が『リーダーシップ入門』のなかで言及しているぐらいだろう。金井氏は、リーダーシップを、リーダーとフォロワーの間にある現象だととらえ、リーダーの行動や資質だけに依存する考え方を超越するが、そのなかで効果的なリーダーシップが生起するため、フォロワーが能動的に行動することが重要だと指摘している。

では、よいフォロワーとはどういう人なのだろうか。ウォレン・ベニス、バーバラ・ケラーマンなどの米国のフォロワーシップ研究者の議論をまとめてみると、大きく分けてフォロワーに求められる要件(つまり、フォロワーシップ)とは3つの能力で成り立っているように思う。

1つ目は、リーダーが語っているビジョンの正しさと実現可能性を評価する能力である。言い換えれば、自分がついていくべきリーダーを選択する能力である。これを通じてリーダーの言っていることや、やっていることにどれだけ信頼がおけるかを判断し、コミットする対象を決める。そのためには、前回このコラムで書いた人材観察力がフォロワー(例えば、部下)からリーダー(例えば、上司)への関係でも必要だ。ついていくに足るリーダーを見極め、選択することからフォロワーシップは始まる。

2つ目が、選んだ対象へ意図的に努力を集中する能力である。コミットする力と言ってもよい。コミットとは、積極的な努力によって生まれる結果であり、自然にできあがるわけではない。特にリーダーが語るビジョンへのコミットは、それ自体がまだ実現していないという意味で、疑おうと思えばいつでも疑えるので、迷いを乗り越えて、ビジョンの実現のためにエネルギーを注ぐ能動性が必要だ。組織変革や国造りのような大きなビジョンの実現は、一人ひとりのフォロワーが意図的に努力を注入して初めて可能になる。