そしてもう一つが、自分自身によるリフレクション(振り返り、内省)である。つまり、自分自身で成長の軌跡を跡づける機会である。最近の学習理論によると、大人の成長過程において、リフレクションは極めて大きな学習効果に結び付くことがわかっている。自律的成長の大きな一部が、自己による成長の跡づけなのである。これはキャリア前半の縦の成長過程でも重要だが、特に後半の横の成長過程では鍵となる。

当然だが、この時期にリフレクションによって成長実感をもたせるのはとても難しい。ほっておくと、こうした人材は、成長期を卒業したと安易に考えて、成長への意欲をもたなくなる。この時期でも、ロールモデルの設定、多彩な経験の提供、チャレンジ度の高いローテション、研修の場など、複数の学習機会を提供して、振り返りを促進し、成長実感をもってもらうことが重要だ。

社員の自律的な成長への働きかけと支援が本当に必要なのは、キャリア貢献期なのである。中堅以降で、“成長の終わり”では、会社の変革は起こらないし、また本人の意欲も減退してしまう。これまで自律的成長というと、主に若い人へのメッセージが多かったように思うが、企業の競争力の根源は、やはり本格的なプレーヤーになった人材の継続的な成長なのだ。企業は、特にこの時期の「大人の学び」を応援する必要がある。

(平良 徹=図版作成)