早稲田大学文学学術院のハラスメント問題で、教授を解任された渡部直己氏が、早大から退職金の返還を求められ、これを拒否していることがわかった。また渡部元教授は被害女性に対してもまだ謝罪していない。早大のセクハラ問題、第6弾をお届けする――。
早稲田大学文学学術院のウェブサイトより。

早大は重大性に鑑み、退職金の返還を勧告

早大広報課によると、渡部元教授は2008年4月に就任し、18年7月まで勤務していた。退職金の扱いについては、渡部元教授の代理人である大口昭彦弁護士が明らかにした。

早大のホームページなどによると、早大はプレジデントオンラインの報道の後、調査委員会を設けた。その後、調査委員会による調査の結果を踏まえて、「査問委員会」を設置した。

その結果、早大は、渡部元教授による以下の非違行為などを認定した。

・女性に対し、指で肩や背中を押す、頭を触る等の不必要な身体接触を行うなどの行為によって不快感を与えたこと
・女性を食事に連れて行き、食事の際、申立人に対し、「卒業したら女として扱ってやる」、「俺の女にしてやる」などと告げたことによって、苦痛を与えたこと
・本学の名誉および信用を著しく傷つけたこと
・女性以外の学生に対してもハラスメント行為を行ったこと

その上で「当該教授について教員としての職責を全うできない」と判断し、教授職から解任する処分を下した。解任は懲戒免職ではないため、退職金が支払われる。このため早大は大学に与えた重大性に鑑み、退職金の返還を勧告していた。

「退職金は返還しない。返還する必要がない」

8月21日、渡部元教授の代理人である大口弁護士が、プレジデントオンラインの取材に答えた。主なやり取りは以下の通り。

――退職金は返還しないのか。

退職金は返還しない。退職金とは賃金の後払いという性格があり、返還する必要がないためだ。

――しかし、早大は大学に与えた重大性から返還を求めている。

渡部氏は世間からいろいろと非難を受けた上、事案については自分に問題点があったと本人も反省している。

――まだ被害者に直接謝罪できていないのでは。

謝罪したいという気持ちはある。

――渡部氏は被害女性側に対して、直接謝罪をしたい旨をファクスで申し入れてはいるが、被害者側の質問に対して回答していないため、謝罪が実現していない。被害者側が回答を求めているのは以下の2点だ。

・渡部氏本人は「過度な求愛」などという言葉で事実関係を曖昧にしようとしており、一時的な感情表現の誤りとしている。だが、被害者側としては、このことは一時的な感情表現の誤りではなく、優位的地位、継続的関係を利用したセクハラ行為だと認識している。それに対して渡部氏はどう考えているのか。
・ほかの女子生徒に対しても同様のハラスメントをしたのか否か。

なぜ回答していないのか。

渡部氏は被害女性の全ての主張を認めているわけではない。

――具体的にはどの部分で主張が違うのか。

それは、そういう話し合いの場を女性との間で設けられれば、そこで本人にお話したい。

――被害者側は直接会う前に、上記2点の回答を求めている。

これまで大学との話し合いが続いていた。今後は被害女性への謝罪の問題についても、もっと考えていくと思う。

――被害者側は上記2点の回答を求めて、6月中に大口弁護士へファクスを送っている。大学との話し合いが続いていたのにしても、時間がかかっているように感じる。

被害者側から受け取ったファクスの内容は渡部氏にも伝えている。なぜ返答が遅くなっているのかは(代理人である私には)わからない。