70歳まで繰り下げれば、
65歳時の42%増の年金がもらえる

図1:70歳までガマンすると42%も年金が増える

図1:70歳までガマンすると42%も年金が増える

65歳からもらい始める老齢基礎年金を据え置き、繰り下げて受け取る「繰り下げ受給」というしくみがある。これは、1カ月受け取りを遅らせるごとに年金額が0.7%ずつ増えていくもの。つまり、遅くもらい始めるほど年金の受給額が高くなるのである。図1のように、66歳まで繰り下げれば65歳からもらい始めるより8.4%増え、67歳からにすれば16.8%増え、70歳までガマンすれば、42%も増えるのである。2008年度の年金価額で計算すると、65歳からもらえる老齢基礎年金の満額(最高の40年加入した場合)が年額79万2100円。70歳まで繰り下げると、年額112万4800円に増える。

とてもおトクな話に聞こえるが、これは本当にトクなのだろうか? そこで、受け取る年金の総額で比べてみたのが図2のグラフ。65歳から受け取るときと70歳から受け取るときの年金総額を比べると、81歳を過ぎたあたりで逆転する。つまり、81歳よりも長生きしそうなら、70歳まで繰り下げて受給したほうが受け取れる年金総額が多くなるのだ。しかし、それより早く亡くなってしまったら、65歳からもらっていたほうが年金総額は多くなる。ちなみに厚生労働省が7月31日に発表した2007年の日本人の平均寿命は男性が79.19歳、女性が85.99歳。健康に自信がある人や長生き家系の人は繰り下げがトク!?

図2:年金の繰り上げ受給は注意が必要

図2:年金の繰り上げ受給は注意が必要

とはいえ、これが選択できるのは、65歳以降にほかに収入や貯蓄があり、生活に困らない人。老後の働き方、お金の使い方も含めて検討したい。

繰り下げ受給は、12カ月以上から1カ月単位でできるので、65歳からもらい始めなかった人は、66歳過ぎから70歳までの間にいつでももらい始めることができる。繰り下げ受給は70歳までしかないので、70歳になったらすぐ手続きを。70歳を過ぎても受け取らないと、手続きをしなかった間の数カ月分の年金がもらえなくなり、ソンしてしまうことになる。

繰り下げ受給を選びたいときは、65歳のときに裁定請求(年金をもらう手続き)をしないでおく。65歳より前に厚生年金の報酬比例部分をもらっている人は、65歳になったときにくる「国民年金・厚生年金保険老齢給付裁定請求書」というハガキにある、老齢基礎年金の「繰り下げを希望する」という項目に○印をつけて返送し、その後、受給開始の希望月に「繰下げ請求書」を社会保険事務所に提出する。

繰り下げ受給の予定をやめて、65歳から年金をもらい始めたいときは、社会保険事務所か市区町村役場の窓口で裁定請求を行う。5年以内の分はさかのぼって支給される。

また、老齢厚生年金にも同様の「繰り下げ受給」の制度があり、同じく1カ月あたり0.7%増える。老齢基礎年金と老齢厚生年金の繰り下げは、同時にもできるし、片方だけの繰り下げも可。繰り下げる時期も別々に選べる。ただし、65歳より前に支給される特別支給の老齢厚生年金は繰り下げできないから、受給できる時期にキチンと受け取っておくのが基本だ。