問題解決に取り組むときに、網羅的に考えるのではなく、現時点で手にしている情報から仮の結論=仮説を構築して、その仮説を検証・修正しながら最終結論に至る思考法を仮説思考といいます。

<strong>須藤実和</strong>●慶應義塾大学大学院教授・公認会計士<br>東京大学理学系大学院修士課程修了。博報堂、ベイン・アンド・カンパニーパートナー等を経て独立。教鞭をとる傍ら企業の経営アドバイスに携わる。著書に『コンサルティング実践講座』など。
須藤実和●慶應義塾大学大学院教授・公認会計士
東京大学理学系大学院修士課程修了。博報堂、ベイン・アンド・カンパニーパートナー等を経て独立。教鞭をとる傍ら企業の経営アドバイスに携わる。著書に『コンサルティング実践講座』など。

最近は問題解決のプロセスと「仮説・検証・修正」という仮説思考のプロセスがイコールで語られることが多いのですが、これにはいくつか理由があります。

1つは仮説を立てないと意思決定が間に合わなくなってしまうからです。あらゆる情報を集めて仮説を立てたら、誰でもおおむね同じ答えにゆきつきます。本当は情報が完全に集まることなどありえないし、集まるのを待っていたら競争に乗り遅れたり、ゲームオーバーになってしまうかもしれない。情報が出揃う前にタイムリーな意思決定をしなければならない状況が増えてきているのです。

2つ目は不確実性への対処です。先行きが見えない世の中では、注意深く物事を進めないといつの間にか落とし穴にはまったり、脇道にそれて大きな損失を出すことがあります。仮説を立て、それを実行しながら常に検証し、状況から考えてベストではないと判断したら瞬時に軌道修正する。その繰り返しでヒット率の高い答えを出し、不確実性のレベルを下げる思考法こそが仮説思考なのです。

仮説思考による問題解決のプロセスは図のようになります。仮説の構築・検証・修正というサイクルを回しながら、いわば螺旋状に仮説の精度が高まってゆく、というイメージです。

仮説を立てる前段階にもステップがあって、最初に行うのが情報収集と分析です。情報が出揃わないうちに仮説を立てると説明しましたが、事実情報が少なすぎても仮説は不十分なものになる。可能な限り集めた情報を分析して、いま取り組んでいる問題や課題の根源にあるものを見つけ出し、それを解決するための糸口を探し当てるのです。