40歳前後の「ロスジェネ」は正規雇用に強いこだわりをもっている。バブル経済崩壊後、厳しい就職難を経験したからだ。だが、それが身を滅ぼす原因になるかもしれない。三菱総研の高橋樋寿夫主席研究員は「ロスジェネはこれから30年間、働き続けなければいけない。キャリア形成を会社に依存していると、厳しい老後を迎えることになるだろう」と指摘する――。

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ロスジェネの典型的な人物像とは

本シリーズでは、いま日本の直面している様々な課題およびそれに伴う閉塞感を打破するカギはロスジェネが握っている、という問題意識からスタートしている。第3回はロスジェネの「仕事観と生活」を取り上げたい。

「ロスジェネ」とは1990年代から2000年代初頭にかけて、バブル経済崩壊後のきわめて就職が困難な時代に学校を卒業し、就職活動を行った世代を指す。三菱総研では1970年から1982年に生まれた世代と定義している。

彼らのことを論じるには、具体的なイメージをつかむ必要がある。今回、三菱総研で実施している大規模生活者意識調査=mif(※1)の結果を踏まえ、この世代の典型的なペルソナ(人物像)を描いてみたい。

※1:Market Inteligence&Forcast(生活者市場予測システム)の略称。2011年から毎年6月に設問総数約2000問、20歳から69歳を対象として日本の縮図となるような30000人を対象に実施している生活者調査。

私、工藤幹生(仮名)といいます。40歳です。中堅自動車部品メーカーで主に経理を担当しています。家族は妻と子供1人、子供は幼稚園年長組になりました。

大学は都内の中堅私立に通い、商学部でマーケティングを専攻していました。ゼミではかなり勉強して成績も悪くはなかったでが、就職は厳しかったです。商品開発部門を当たりましたが全くだめ、やむなく小さな企画会社に入りましたが、そこの仕事がきつくしかも理不尽、我慢できず1年もたずに退職、その後アルバイトで何とか生活をしてきました。

周りにも私と同じような境遇の人がたくさんいました。なんとかそんな不安定な生活から抜け出したいと思い、就職活動をしていました。学生時代に授業で少しかじっていた会計の知識が役に立ち、なんとか今の会社に就職したのが29歳の時。もう少し遅かったら、リーマンショックの影響をもろに受けていたかもしれません。

生活が安定したのをきっかけに、32歳の時に同僚だった女性と結婚しました。出産のタイミングで妻は退社しました。今は近くのスーパーでレジのパートで働いています。子育ても手がかかるので1日4時間限定ですが、仲間と楽しく働いているようです。家事は私もできることを手伝っています。

現在の年収は400万円。仕事は結構きついです。社員が少ないので経理だけでなくいろいろなことやっています。給料も中小企業ですから決して高くないです。嫁さんの給料と合わせてやっと人並みの生活ができる、といったところです。でもこうして家族でいると、ちょっと幸せを感じます。結婚してなかったら、きっと今の仕事をやっていても全然幸せじゃないのではないかな。

でもこれからのこと考えると不安です。貯金はざっと200万円位しかありません。これから子供の教育費や自分たちの老後資金を貯めなくてはいけません。でも自分がクビになったり、会社がつぶれたりするリスクもあります。今はいいけれど、これからのことを考えると、やはり不安です……。