原因を知るためには、まずはヒアリングによって現場の声を集めることだ。質問項目は対象とする企業や業種によって変わるが、営業力に関する要素というのは主に次の3つに絞られる。

1つは「商品力」である。商品力がない商品を売る営業は大変だが、逆にいい商品であれば、さほど営業力がなくても売れる。商品力で一番知りたいのは、競合と比較したポジショニングと顧客の評価で、この2つを聞けば大体わかる。顧客へのヒアリングでは、満足している点、不満足な点、競合と比べてどう評価しているかなど、電話で無記名のアンケートを実施して本音を引き出す。

「商品力」に原因が特定できたとしても、営業がまったく無関係なわけではない。営業マンは商品力を売れない理由にしたがるが、調べてみると商品はそんなに悪くないという場合がけっこうある。むろん開発や製造部門にも責任はあるのだが、その商品を買っている人がいる以上、商品だけが悪いということはありえない。

顧客の声をきちんと拾っていなかったり、拾った声を開発や製造がキチンと理解できる形に変換して伝えていなかったり、文句をつけるだけで言い方が体系的でないなど、むしろ売り方が悪いという結論に至ることのほうが多い。

2つ目の要素は「手法」。つまり組織の体制からツールまで含めた営業のやり方である。この場合は、顧客とのファーストコンタクトからクロージングまでの営業の流れとプロセスを見る。何にどのくらい時間が使われて、どのようなツールで、どのようなトークをしているか、マネジャーとの関わりはどうか、同行して一連のストーリーを見せてもらう。

最後は「人」に関わる要素である。営業マン個々のスキルや能力、意識、あるいは会社の教育システムに関連する要素である。これらについては、個別にヒアリングする以外に抽出する方法はない。

「人」の要素で大切なのは、売れている人と売れていない人、両極端を見ることだ。10倍くらい成績が違うケースなどはザラにあり、見ていくと売れていない人にはやはり売れない理由があり、売れている人には売れる理由がある。両者の話し方や行動パターンを調べて比較すれば、課題が「人」にあるのか、あるいは実は「手法」にあるのかも見えてくる。

売れている人と売れていない人を比較する第一義の目的は、原因を特定することである。同じ会社の同じ組織に属していて、同じ商品を売っていて、たとえばプレゼンの仕方が極端に違うのはなぜか。どちらも同じ研修を受けたはずなのに、片やプレゼンの勘所をつかむのがうまくて、片やそうではないとすれば、教育に問題があるのではないか。

教育もしっかりやっているし、資料もバッチリ揃っているのに、プレゼンの仕方、つまり「手法」がまるで違う場合もある。資料やツールを使うか使わないかの選択権は営業マンにあるので、この場合はマネジャーがフォローをしていないことが原因で、会社が営業マンを戦力にできていないことがわかってくる。