いうまでもなく根性論や精神論ではモノは売れない。大切なのは多面的に現場からの情報を集め、売れない原因を特定することである。原因がわかれば、売るための方法論も見えてくる。ここでは現場が抱える課題ごとに、具体的解決策をご紹介しよう。

モノが壊れたり、カラダの具合が悪くなったとき、私たちは故障の原因や体調不良の原因を調べてからなおそうとする。ところが営業に関しては、売れなくなったり、競合に負けが込んだり、組織力が低下していても、原因がどこにあるのかを客観的に見ようとしない。モノやカラダであればできる原因追求が、なぜ営業ではできないのか。理由は3つある。

第1は、現状が可視化できていないことだ。このようなケースでは営業マネジャーが「わかったフリ上司」であることが少なくない。わかったフリ上司には2種類のタイプがあり、ひとつは営業の一線でバリバリやってきたタイプ。もうひとつは技術畑や人事畑など、営業とは畑違いの世界で生きてきたタイプだ。

前者の場合は「オマエたちのやることぐらい全部わかっている」というプライドが邪魔をし、後者の場合は「売る」という仕事が感覚的に理解できないため、売れる、売れないは向き、不向きの問題と、個人の資質に原因を求めて処理をしてしまう。いずれのタイプにも共通するのは現場を見ていないことだ。わかったつもりで接するから営業マンの声を聞こうともしないし、現場が抱える問題や課題に気づこうともしない。

2つ目の理由は、原因の特定の仕方がわからないことだ。営業は結果が明確に数字に表れる仕事だが、そのため逆に数字がカーテンの役割を果たしてしまい、その奥にある原因がまったく見えないという状況が起こる。数字を追いかけて生きている営業マンにとっては仕方のないことだが、営業マネジャーもまた数字の表層に眼を奪われている場合が少なくない。数字が上がれば褒める、下がれば叱るというマネジメントで、売れた原因や売れない原因をつかもうとしない。

3つ目は、優先順位がつけられないことだ。営業ではやったほうがいいか、やらないほうがいいかといえば、やったほうがいいということがほとんどだ。人員は多いほうがいいし、資料もいいものを数多く揃えたほうがいい。営業ツールも見栄えがいいほうがいい。しかし全部を一度に実践しても、けっして売れるようにはならない。原因を潰していくためには、まずは優先順位を決めるべきだが、それをせず結果に直結しないことまで全部に同じように手をつけるために、何もかもが中途半端に終わってしまう。