厳しい経済情勢の現下、ヒット商品が出れば、あやかり型商品が出るのは自然の流れである。今日では、特産物を具材に生かした地域ベースでの多様化に加え、外食産業、コンビニ、ホテルに至るまで、食べるラー油の応用商品は百花繚乱状態である。

例えばブーム絶好調の昨年6月、ファミリーレストランのガストは、「食べるラー油で楽しむ野菜たっぷり冷やし麺」を売り出した。また中華イメージの強いラー油とはほど遠いハンバーガーでもラー油を使った商品が市場化されている。

モスフードサービスは、日本テレビの朝の情報番組「スッキリ!!」との共同開発という形でやはり昨年6月に「テリー伊藤のざくざくラー油バーガー」と「テリー伊藤のざくざくラー油チーズバーガー」の2種類を発売している。アメリカンフードの代表格であるハンバーガーと中華のラー油との「異花授粉」は、まさに水平思考の時代を象徴しているといえる。

さて、それではなぜ食べるラー油はこのような大ブームになったのであろうか。トレンド面の理由を明らかにしてみたい。

一つには、近年の辛い味ブームがあるだろう。桃屋・営業企画室の森本豊彦氏によると、健康志向の高まりから最近の食事は全体的に薄味、減塩傾向になっている。このような味にもの足りなさを感じていた人々はパンチの利いた味を求めていた。その琴線に触れたのが、ラー油だったというのだ。確かに昨今の激辛坦々麺の定番化や辛さに選択の自由度のあるカレーハウスの台頭にみられる辛味愛好ブームは、このような傾向を顕しているといえる。

いま一つは食の内部化(内食化)だ。不況感漂う日本では、いまだ人々の心理面で節約志向が蔓延しており、外食が手控えられている。桃屋の森本氏は、食べるラー油ヒットの理由の一つに、外食から「イエ飯」への転向をあげる。事実、日本経済新聞社が昨年8月末に行ったインターネット調査の結果(日本経済新聞電子版セクション、2010年10月1日刊)によると、「家計の引き締めで、自宅で料理をする機会が増えている」という人は約6割に上っている。

食卓を少しでも華やかにして楽しもうとする人が増えていることが、食べるラー油人気の背景にありそうだ。