オリジン弁当が併設されたウエルシア瀬谷三ツ境店(神奈川県横浜市/著者撮影)

日本は、世界でも類を見ない超高齢化社会に突入しており、薬のニーズは今後も強まっていくだろう。一般小売業が追随できない調剤薬局を併設するドラッグストアは、運営の工夫によっては“ついで買い”を狙うことはできる。利益率も高いため、調剤には可能性がある。ただし、2018年4月の薬事法改正で、特に影響が大きいと思われる調剤基本料、後発医薬品調剤体制加算、および基準調剤加算の廃止と地域支援体制加算が改定され、利益の見直しも始まり、医療費削減のメスが入ってきている。

当面の間、薬で利益を出しながら食料品を薄利多売する構造は変わらないだろう。むしろ加速する可能性すらある。業界1位を走るウエルシアホールディングスも、同じイオングループのオリジン弁当を併設した店舗を出店している。平日の夕方にウエルシア瀬谷三ツ境店を視察したところ、店舗面積が併設ドラッグストアの10分の1もないオリジン弁当のほうに客があふれている現象を目の当たりにした。やはり中食の展開は、ドラッグストアの生き残りには必須なのだろう。ウエルシアは、北海道のコンビニの雄「セイコーマート」が茨城県土浦市に置く食品工場からも弁当などを供給しており、さまざまな実験展開をして一歩抜けているようだ。

自社開発力の弱さがネック

大手ドラッグストアの中食は、コンビニへの卸経験のある工場から仕入れしていることが多いが、まだバイヤーが商品開発に積極的に関わっている事例は少ない。メーカー側から提案を受けて展開しているだけの場合が多いため、自社で開発力を高めてきたコンビニと比較すると見劣りしてしまう。そんな背景もあり、食料品に頼った売り上げ増がいつまでも続く保証はない。薬販売の規制緩和はもとより、アマゾンのような大手ネット通販が生鮮食品に力を入れだしている動きもある。

現在のところポジティブな状況が続いているが、こうした変化する状況にどう対応していくのか。平成という時代に拡大してきたドラッグストアは、平成が終わったあとにどうなるのか。これからが勝負の時となる。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト・コンビニ評論家
1967年、静岡県生まれ。東洋大学法学部卒業。ローソンに22年間勤務し、店長やバイヤーを経験。現在はTBCグループで商品営業開発に携わりながら、流通分野の専門家として活動している。『ホンマでっか!? TV』(フジテレビ)レギュラーほか、ニュース番組・ワイドショー・新聞・週刊誌などのコメント、コンサルティング・講演などで幅広く活動中。
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