「一番大きな理由は、自分のお金と会社のお金の財布が分かれることによる効果です。自己資金だと、人を雇うにも自分の財布から1人あたり1000万円出すみたいな感覚になってしまうので、やっぱり思い切った投資はすごくやりづらくなる。でも、最初の調達があったからこそ、思い切っていい人材を集めようという気になれた」

そう話すように、山田は調達後、開発チームの人員を一気に数人から15人規模まで増員した。ただし、人件費を1人1000万円と計算すると5000万円を足しても1年と持たない。そう、山田は次なる資金調達をせざるを得ない状況へと自ら追い込んだのだ。

アプリリリース後、資金調達ラッシュへ

「9月までに次の調達ができなかったらたぶんキャッシュアウト。そういう状況でした」。そう振り返る山田は、アプリがリリースされた翌8月、2回目となる3億円の資金調達を成功させた。調達先は、アプリ開発やネット広告関連のサービスを展開するIT企業のユナイテッド。調達資金は膨らんだ人件費への充当に加え、リリースされたアプリの広告宣伝にも1000万円単位で投じていった。

勢いは止まらない。翌年の2014年3月、まだ創業から1年しか経っていないベンチャーは、グロービス・キャピタル・パートナーズや伊藤忠テクノロジーベンチャーズなどを引受先とした第三者割当増資を実施。一気に14億5000万円も調達した。

山田流・勝つための資本政策

山田の資本政策とは、攻めるため、言い換えれば、勝つための資本政策だと語る。

「重要なことは、この市場で1位になるかどうか。5000万円も、3億円も、1年後の14.5億円も、当時の自分たちには相当大きな調達だったのですが、とにかく勝ち切るということがファーストプライオリティーになっていて、自分たちの保有比率が希薄化しても1位を取れればそれでいい、という発想でやっていました」

「あの頃、競合他社は、マーケットの可能性をそこまで信じて資金を投下することができていなかったんですね。走り出して、足元の数字は伸びているけれども、それでもまだ分からない状態というか、2013年末にはLINEさんもフリマアプリ事業に参入してきて、先行きは全然、クリアじゃなかった。そうした中、出資者のおかげで強気で投資できたことは、本当に有難かったです」

「加えて、僕らに出資してくれた投資家はほかの競合には出資しないわけで、その意味では応援団を作るというような感覚もありました。できるだけこっちの陣営に引き入れて、勝ちを盤石にするという。かなりのリスクを背負って投資してくれているからこそ、損をさせてはいけないという強い気持ちが芽生え、さらに勝ちにこだわるという好循環も生まれた。本当にウィンウィンの関係ができたと思います」

ここまでのこだわりが、大局観をもって状況を見定める「鳥の目」だとしたら、プロダクトや広告の細部に目を凝らす「虫の目」も同時に持ち合わせていた。