「損か得か」で物事を決める風潮に危機感がある

森川自身、学生時代はジャズバンドでドラムをたたき、プロを目指した時期もあった。アーティストをサポートする事業には、人一倍、思い入れがある。そして、「若い人が大きな夢を描き、チャレンジすることを当たり前にしたかった」という起業の動機を考えれば、森川が「mysta」を始めることは必然だったのかもしれない。

森川:「損か得か」が物事を決める最優先の基準になってしまい、みんなどんどん声が小さくなっている。そんな社会の状況に対して、強い危機感があります。

人がもっと自信をもって大きい声を出せる場所を増やしていかない限り、社会におけるメディアの価値も薄らいでしまうでしょう。コピーを配信するだけのメディアは淘汰されていくはずです。

C Channelの森川亮社長(撮影=門間新弥)

これからのメディアは、「人」が中心になっていくのではないでしょうか。どんなに知識や経験、お金やブランドがあっても、その人が輝いていなければ、見る人の心に刺さらない。そういう時代に変わっていくと感じています。自分の言葉で語れる人が、これからどんどん出てくるはずです。そういう大前提の中で、いろんな分野の輝く人を生み出せるプラットフォームにしていきたいと考えています。(後編に続く)

森川 亮(もりかわ・あきら)
C Channel社長
1967年、神奈川県生まれ。89年、筑波大学卒業後、日本テレビ放送網に入社。コンピュータシステム部門に配属され、ネット広告、映像配信、モバイルなどの新規事業立ち上げに携わる。MBAを取得後、2000年にソニー入社。03年にハンゲーム・ジャパン(現LINE)入社。07年、同社代表取締役社長に就任。15年3月、同社代表取締役社長を退任し、顧問に就任。同年4月より動画メディアを運営するC Channel代表取締役社長。
三宅 玲子(みやけ・れいこ)
ノンフィクションライター
1967年熊本県生まれ。「人物と世の中」をテーマに取材。2009~2014年北京在住。ニュースにならない中国人のストーリーを集積するソーシャルプロジェクト「BilionBeats」運営。
(撮影=門間新弥)
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