不安定な雇用と収入出口のない貧困の連鎖

景気が冷え込んでいる地方では、ワーキングプアの問題はさらに深刻だ。産業は衰退し、急速に“貧困”が加速する可能性があるといわれる。

「来年はないよ」

無駄に高学歴です。むしろ就職を考えたら、学歴を隠したほうがいい<br><strong>小野俊彦 33歳</strong><br>九州大学大学院・比較社会文化学府・博士課程満期取得退学。2003年、3人の仲間と「フリーターユニオンふくおか」を立ち上げ、執行委員長に。福岡市で大学の非常勤講師を務める妻と2人暮らし。今年3月からは不定期で翻訳の仕事を行っている。<br>※写真と本文は無関係です。
無駄に高学歴です。むしろ就職を考えたら、学歴を隠したほうがいい
小野俊彦 33歳
九州大学大学院・比較社会文化学府・博士課程満期取得退学。2003年、3人の仲間と「フリーターユニオンふくおか」を立ち上げ、執行委員長に。福岡市で大学の非常勤講師を務める妻と2人暮らし。今年3月からは不定期で翻訳の仕事を行っている。
※写真と本文は無関係です。

07年9月、福岡市に住む小野俊彦さん(33歳)は、期限付きの契約社員として英語を教えていた予備校から突然、一方的に契約更新を拒まれ12月8日付での「雇い止め」を通告された。「おまえの代わりはいくらでもいる」といった上司からの暴言に対し、労働組合を通じて話しあうと抗議したのが原因だ。

無職のまま新年を向かえ、ハローワークや求人誌などで仕事先を探し、面接までこぎつけた2件の予備校もダメだった。ようやく、3月下旬に翻訳の仕事が見つかったが、「アルバイト兼フリーランスという状態」で月収はよくて数万円だという。

「無駄に高学歴です。僕みたいに博士課程までいって生意気な奴は、どの企業もとらないですね。むしろ就職を考えたら学歴を隠したほうがいいですよ」

小野さんは先のケンジさん同様、いわゆる「高学歴ワーキングプア」だ。九州大学に進学し、卒業後は研究者を志し同大大学院の比較社会文化学府・研究院に進んだ。専攻は社会学だった。

在学中の03年頃、イラク戦争の際の反戦運動をきっかけに、フリーターや格差を考えるようになった。そうした問題の根底にあるのは労働問題だ――。そう思った小野さんは、同じ志を持つ3人で06年、「フリーター/非正規雇用労働者ユニオンふくおか(fuf)」を立ち上げ、執行委員長に就任した。

07年3月、博士課程の全単位を取得したうえで、大学院を退学した。

「労働問題をやるうえで必ずしもアカデミックな必要はないと思った。しかも大学院進学者の激増で、研究者になるには何十倍、何百倍を勝ち抜かなきゃいけない。そもそも僕は、業績になるような論文を量産できるタイプじゃなかった」