A4紙6枚 畑岡のレポートに驚愕した

トミーアカデミーでは、選手たちにレポートの提出を義務づけている。その理由について、中嶋はこう説明する。

「レポートを書かせることで、その子の咀嚼能力、つまり、教わったことを咀嚼して、自らの栄養にする能力がどれぐらいあるかがわかります。彼女のレポートは、教えることの本当の意味、教えたことのその先にあるものまでを察してというか、想像できるというところはありましたね。だから最初のレポートを読んだ瞬間から、ああ、この子はすごく賢いなと思いました」

今回特別に、畑岡が合宿終了後に書いたレポートを見せてもらった。タイトルは「今回の合宿で学んだこと」。A4のレポート用紙6枚に、几帳面な文字が整然と並んでいる。

「他のスポーツの方と一緒にトレーニングする機会があった時には『このトレーニングは自分に必要なのか』『体が硬くなり動きにくくなるようなトレーニングではないか』判断をしていかなくてはいけないと思いました。なので、シャープさ(俊敏性、柔軟性)がなくなってしまわないように注意していこうと思いました」

林 祐樹●森ビル リゾート事業推進室兼宍戸国際ゴルフ倶楽部取締役。ヒルズゴルフトミーアカデミー時代より畑岡の育成に携わり、2018年1月より畑岡のマネジャーを務める。

畑岡のレポートからは、教わったことを鵜呑みにすることなく、自分の目標から逆算して自分の頭で考え、そのトレーニングの必要性を見極めたいという強い意志が窺える。畑岡の所属する森ビルのリゾート事業推進室所属で、18年1月より畑岡のマネジャーを務める林祐樹はこう語る。

「試合前のルーティンを見ていると、ストレッチひとつとっても、チューブを使って負荷をかけながら行うなど、その時々で少しずつ変化しているんです。自分のコンディションを敏感に感じながら、自分に必要なこと、必要でないことを常に峻別しているんでしょうね」

トミーアカデミーと同様、「書く」ことを重視したコーチングを行っているのが、日本ゴルフ協会(JGA)のナショナルチームだ。畑岡がナショナルチームの一員となった15年末から、オーストラリア人のガレス・ジョーンズをヘッドコーチに招き、世界水準の強化プログラムに取り組んでいる。JGAの専務理事・山中博史はこう語る。

「書くことを通じて、自分の長所・短所を把握し、記憶することが目的です。たとえばその日ラウンドした18ホールについて、自分のショットを振り返り、どんなミスをして、結果どうなったか、そのミスは何が原因で起こったのか、などについて詳細にレポートさせます。畑岡選手だけは、他の選手の2倍ぐらいの密度で詳細に書いてくる。おそらく、この課題をこなすだけで数時間かかっているはずです」