神戸の震災の経験をもとにすれば、この支援のプロセスには、緊急事態対応・再建援助・自立支援という3つのフェーズがある。フェーズごとに主役や、基本的な発想方法は違ってくるということをよく理解しておく必要がある。

第一は、緊急事態対応フェーズである。災害が起こった直後数日の間である。このときには、地域の自治体の組織は役立たない。役所であるがゆえの制約があるし、役所で働く人々の多くも被災者だからだ。役に立つのは、緊急即応部隊、ボランティアをはじめ勇気ある民間人のゲリラ的な支援だ。軽率だという批判を恐れずに、気づいたところでできることをする人々が主役となる。これらの人々の個人プレーがカギとなる。このときには、合法性、権限、公平性、秩序といった価値基準にこだわらないようにすることが必要だ。

一息ついた第二の再建援助フェーズになると、多数の被災者を継続的に支援し続けることが必要である。そのためには秩序だった協働と資金供給が不可欠だ。このフェーズでは、役所が主役となる。職務分掌に忠実に機敏に動くという発想が必要だ。

そこから数カ月たって第三の自立支援フェーズになると、援助を与えることよりも自立を見守るという発想が必要である。この段階での主役は被災者自身である。ここでは親切な援助はかえってマイナスとなる。被災地域が自立した経済組織として動けるようにしなければならない。冷たく聞こえるが、もう援助はやめようという姿勢が必要だ。同時に主役である被災者の再建への意志をなえさせないようにする上手な支援が必要だ。

今回の被害は神戸より格段に大きいため、第一フェーズが神戸よりも長くなるであろう。地域によって災害の影響の深刻さも違う。回復のスピードも違う。その結果、地域ごとにフェーズが違ってくる可能性も高い。それにともない異なった対応が必要になる。地域がどのフェーズにあるかを見極めて主役がだれであるか、考え方の支柱を何にすべきかを判断しなければならない。それは広域を管轄する人々の仕事である。

(浮田輝雄=撮影)