図1の右は男性の体です。女性は子宮の下に膀胱(ぼうこう)がありますが、男性は子宮がないので膀胱がもう少し上にあります。40歳を過ぎた男性からよく聞く悩みがこちら。「最近、夜中にトイレに起きるんです。前はそんなことなかったのに。前立腺肥大ってやつですか?」

『内臓脂肪を最速で落とす』(奥田 昌子著・幻冬舎刊)

もちろん、その可能性はあります。前立腺は、男性の膀胱の下にくっつくように存在する、クルミくらいの大きさの臓器で、尿が流れる管が前立腺をつらぬくように通っています。そのため前立腺が腫れると尿の通り道が押しつぶされて、尿の出が悪くなる、出してもすっきりしない、頻繁にトイレに行きたくなるなどの症状があらわれます。

しかし、この前立腺肥大、有名な割に発症率はそれほど高くありません。前立腺肥大ではっきりした症状が出るのは50~65歳の男性の約15パーセント、65~80歳の約25パーセントとされています。そのため、トイレに何度も起きることを気にして病院を受診しても、前立腺肥大というほどではありませんよ、と言われて帰されてしまう人が多いのです。

こういう人は内臓脂肪がたまっていないか考えてください。内臓脂肪がぎっしり付いて膀胱を上から圧迫すると、尿をしっかりためられなくなって夜中にトイレに行くはめになります。また、膀胱が押されて尿の通り道がつぶれれば尿の出が悪くなり、前立腺肥大とよく似た症状があらわれます。もちろん内臓脂肪は男性の便秘の原因にもなります。

胃が脂肪に押されて逆流性食道炎に

いったん胃に入った食べものが、胃酸と一緒に食道に戻りかけるのが逆流性食道炎です。食後しばらくして胃酸だけがこみ上げてくることもあります。

食べたものは食道を通って胃に運ばれます。食道の長さは25センチくらいあり、蠕動運動することで、食べたものを一方通行で胃に送り込んでいます。だから、健康であれば、寝転がったままでもものを飲み込めるわけですね。これに加えて食道と胃の境目には筋肉があり、普段はぎゅっと閉じることで、胃に入ったものが食道に戻らないようにしています。ちょうど巾着袋のような構造になっているのです。

胃は常に胃酸を分泌していて、1日の分泌量は2リットルにおよぶといわれています。胃酸は強烈な酸性物質で、食べものが胃に入ると分泌量が一気に10~20倍に跳ね上がりますが、胃の組織は胃酸の攻撃に耐えられるようにできているため心配ありません。

しかし、何らかの原因で胃酸が食道に逆流すると大変です。食道は特別な構造になっていないので、胃酸にふれると胸のあたりに焼けるような不快感があらわれ、ゲップが出たり、ひどいときは戻してしまったりもします。

これが、最近増えている逆流性食道炎です。この原因として、食べ過ぎ、飲み過ぎ、姿勢が悪い、加齢、ストレス、腹圧の上昇などが指摘されています。

腹圧とはおなかにかかる圧力のことです。はい、もうおわかりですね。内臓脂肪がたまると、脂肪が胃を周囲から圧迫します。そうなると、胃がのびのびと蠕動運動を行うことができず、本来なら小腸に送らなければならない食べものと胃酸が行き場を失って食道に上がりやすくなるのです。

胃酸をおさえる薬を飲むのも大切ですが、そもそも胃酸が上がらないようにするには減量が欠かせません。そのうえで、早食いをやめ、食後すぐに横にならないようにするなど生活習慣を正すことで、薬を飲まなくてよくなる人が大勢います。