そうしたリスクを回避し、ブランドイメージを保つためにも、独自の規格を用いる意義は大きい。それができたのは、iPhoneというヒット商品を生み出し、「アップルの製品を持ちたい」という人々の欲求を高められたからだ。

スマホ市場は機能競争から価格競争に移行した

投資家のなかには、iPhoneの販売台数は今後伸び悩む、という声が根強い。なぜなら、2017年、世界のスマートフォンの出荷台数がはじめて減少したからだ。それは、各社が画面の大型化、人工知能の搭載などを進めた結果、それぞれの製品の機能面の差が少なくなってきたことを意味する。

2018年1~3月期、世界全体でスマートフォンの販売台数は前年同期比で1.3%増加した。この増加を支えたのが、150ドル未満の低価格モデルである。スマートフォンの市場では、機能の違いに基づく競争ではなく、価格競争が進んでいる。言い換えれば、機能面よりも、価格の低さに魅力を感じる人が増えている。

この状況でアップルが成長を続けるためには、新しいヒット商品が必要だ。それは、従来の規格をもとに、機能を部分的にアップデートした商品ではない。最先端のテクノロジーを搭載して、従来にはない使いやすさ、楽しさを実現するデバイスを生み出すことが求められる。

狙いは「データ送受信の高速化や充電時間の短縮」か

そのための施策として、コネクタを見直すことはあり得ることだ。自社規格だからといって、Lightningを使い続けることは、環境変化への対応という点でマイナスに働く可能性がある。

機能面ではUSB‐Cは、現行のLightningよりも優れている。たとえばデータ送受信の高速化や充電時間の短縮などを劇的なレベルで行うには、規格そのものを見直す必要がある。

こう考えると、冒頭で示したとおり、アップルがUSB‐Cの採用を検討することに、何ら違和感はない。むしろ、自らの規格に固執し続けると、企業がヒット商品を生み出すことは難しくなるかもしれない。アップルが先端テクノロジーの可能性に注目し、その実用化によって新しいデバイスを創造し、ヒットさせることができれば、成長を続けることは可能だ。その取り組みの一つとしてUSB‐Cの採用がどうなるかを考えるとよいだろう。