原作と映画の連携も奏功

さらに映画の好調を後押ししたのは、原作の盛り上がりと原作者の全面的な協力体制でしょう。2012年頃から原作では、シリーズを通しての“謎”や新事実が相次いで明らかになっており、物語も佳境に入っています。直近では黒ずくめの組織で「あの方」と呼ばれる存在、つまりボスの正体も明かされましたし、キャラクター同士の人間関係も深まっています。

この原作と映画の協力体制こそ、近年の伸長の最大要因だと思います。劇場版コナンは、第1作目から青山先生が一部の原画を担当するなど、原作と映画には協力体制があったのですが、2014年以降は、原作のエピソードに先行して、映画で(原作の)大きなネタばらしをしたり、映画で登場するキャラを、原作で先に登場させたりするなど、原作と映画の展開を合わせる戦略をとっています。そういった“二人三脚ぶり”をみせることで、原作ファンをガッチリとつかんで映画館に送りつつ、一方で映画から入った新規ファンを原作に誘導しているのです。

今年も映画公開にあわせて、2017年末より休載していた原作連載を再開。シリーズファンが待ち望んでいた安室と赤井の人気キャラ対決で幕を開け、ファンの話題を呼びました。さらにゴールデンウィーク明けからは安室を主人公にしたスピンオフ作品『ゼロの日常(ティータイム)』の新連載も『週刊少年サンデー』で始まり 、話題の拡大とファンのさらなる取り込みに成功しています。

注目キャラ「安室透」とは何者なのか

映画『ゼロの執行人』は、東京サミットを狙った大規模爆破事件を発端に、大人たちのシリアスなドラマが繰り広げられる作品です。コナン映画ではテレビシリーズでは見られないようなスケールの大きい事件に定評があるコナン映画ですが、本作でもサイバー空間を舞台にした過去に例のない規模の犯罪が描かれます。江戸川コナンは事件に巻き込まれ、公安組織を巡るさまざまな政治と人間関係のナゾに迫ることになります。

物語のキーキャラクターは29歳の青年、安室透。毛利探偵事務所の近くの喫茶店でバイトをしている私立探偵であり、コナンの宿命の敵である黒ずくめの組織の一員であり、公安警察「ゼロ」で活躍する捜査員でもある――という、複雑な背景を背負った人物です。「トリプルフェイスの男」とも呼ばれ、近年作中でも存在感を増してきています。