個の力を最大限引き出すには、1つ1つの素材を活かす「さじ加減」がとても重要だ。それは料理でも人でも同じ。さまざまな食材を一度に鍋に入れ、調理すればいいというモノではない。ライフネット生命の岩瀬大輔会長は、昨年、フレンチシェフ・松嶋啓介氏の「料理教室」に参加し、そんな感想を抱いたという。『「食」から考える発想のヒント』(実業之日本社)を出した松嶋氏と岩瀬氏の対談をお届けしよう――。(第3回)
ライフネット生命の岩瀬大輔会長(左)、フレンチシェフの松嶋啓介氏(右)

個の力を引き出す火加減、塩加減

【松嶋啓介氏(フレンチシェフ)】開催した自分もインスピレーションを受ける部分もあった料理教室でしたけど、参加してみてどうでした?

【岩瀬大輔氏(ライフネット生命保険 取締役会長)】最初は社内を説得するのに苦労しましたよ、友人の料理教室に社員を誘うのは(笑)。自分自身もあそこまで良いとわかっていなかったからなおさらね。でも、大変感銘を受けたし、マネジメントにも大いに役立ちました。具体的にいうと、まずラタトゥイユは食材を全部鍋に入れて、塩振って炒めるだけだと思っていたけど、1つ1つ分けて炒めていましたよね。それぞれ素材が違うので、火加減、塩加減、ベストを引き出すにはやはり1つ1つやらないとダメだということを学びました。マネジメントにおいても、役員とは1人ずつ話す機会を多く作っていこうと。

【松嶋】なるほど……。

【岩瀬】スタッフも1人ずつ違うのだから、ベストを引き出すにはONE ON ONEが一番良い。そして、最後に素材を混ぜ合わせて仕上げるというところも、マネジメントでいえば、合宿などを行い1つの方向性に目線合わせする。とにかく個の力を最大限引き出すには、1つ1つの素材を活かす火加減、塩加減、さじ加減がとても重要であると気づいたのです。

【松嶋】逆にそれを言われてウチの会社でもそうしようと思った(笑)。素材にはやってたけど、人にはやってないと。

【岩瀬】もう1つは、イノベーションは全部を変えてはダメだということ。この観点で感じたことは、インターネットを活用して生命保険を販売するという新しいチャネルを世の中に広めていくフェーズにおいては、提供する保険商品は、まずはみんながよく知っている保険商品から提供するべきだと。チャネルも、保険商品も、全てを一気に変えるのではなく、順序立ててイノベーションを起こしていく必要がある、と。

【松嶋】うん。